>>312
夢野久作研究しておられる方の意見だが「胎児の夢」と題される、この論文こそ
20年後に呉一郎に千年前の祖先の異常心理をよみがえらせ、奇怪な殺人事件を
犯させた「実験」の基礎理論なのだそう。
「人間の胎児は単細胞式微生物の生活状況」から始まり、その微生物→動物→人間になる過程をたどる
その最後の人間は代々の祖先たちの体験と心理をたどって「胎児の直接の両親に」至まで夢は続く。
つまりその夢は「数億年、乃至、数百億年」の人類の進化の歴史と、人間になってからの歴史の追体験なのである。
この「胎児の夢」は「脳髄論」と表裏一体をなしている。人間の意識は脳髄にあるのでなく、細胞の一つ一つにある。
したがって、母親の胎内に宿った最初の「タッタ一つのマン丸い細胞」にも意識がある。
その意識が「元始の単細胞式微生物」時代の生活を夢に見るーーー記憶を追体験して胎児の意識を形成する。
胎児が夢を見おわった時胎児は母親の体外に押し出される。その瞬間、夢=進化の体験の記憶は「潜在意識のドン底」にかくれる
。しかし、その記憶が人間の意識化に残っている証拠には「人間の皮」をひと皮めくれば
「陰性」や「虫ケラ根性」が現れるのではないか、と正木教授はいささかふざけて説明する。

従って「その人間の個性とか、特徴とか言うものは一つ残らず、その人間が先祖代々から遺伝してきた、心理作用の集積に他ならない」わけで
ある刺激を与えて「夢中遊行」状態にすれば、先祖の心理状態が復元される。
呉一郎にとっては、千年前の祖先が描いた絵巻物がその「刺激」であり、彼はそれを見て
先祖の残虐性、変態性を思い出してしまった。

最初に聞いた「ブウウーーーーン」という音だが、最後にもまた同じ病室で同じ音を聞く
そして彼は、自分はまだ胎内にあって。先祖の体験を夢に見ているいるのではないかというのだ。
とすれば、自分は生まれてからもまた、この物語全体を体験させられるかもしれない・・・
そしてその体験はまた『胎児の夢』であるのかもしてぬ。自分がだれであるかもわからず、
悪夢は永遠に終わらない。

という既出の本がありまんた。

>>315
>「一人しかいない小使が休んでる」
どのあたりでしょうか。