「ドグラ・マグラ」は、昭和10年1月、一五〇〇枚の書き下ろし作品として松柏館書店から自費出版された。
〈日本一幻魔怪奇の本格探偵小説〉〈日本探偵小説界の最高峰〉〈幻怪、妖麗、グロテスク、エロテイシズムの極〉と歌った宣伝文句は、読書界の大きな話題を読んだが、常人の頭では考えられぬ、余りに奇抜な内容のため、毀誉褒貶が相半ばし、今日にいたるも変わらない
〈これを書くために生きてきた〉と著者みずから語り、十余年の歳月をかけた推敲によって完成された内容は、狂人の書いた推理小説という、異常な状況設定の中に、著者の思想、知識を集大成する。
これを読む者は、一度は精神に異常をきたすと伝えられる、一大奇書。(角川文庫版背表紙紹介文)