僕は、新しい文学の玩具的見本のようなものは、今迄に百篇近く書いているが、その核心は
未だつかまれていない。なにより先に、菊池寛に始まる「テーマ」という通俗概念、新聞小説的
「筋」という有害無益なるもの、この二つが自分において如何に変換されねばならないかについて
未だ何の見当もついていない。僕は、テーマへの依存性、会話万能、婦人への阿り等々を
苦々しいものに思っている。現代における文学衰退の元は、実はこれらにあると云っても差し支えない。