千葉雅也 @masayachiba
三島由紀夫がスパーリングでストレートしか打たないので、観覧していた石原慎太郎がフック!フック!と声をかけた。その後話すと、フックはまだ習っていないんだ、と答えたという。石原の方に「生きる力」や「地頭」などを見る向きが多そうだが、フックは習っていない、の方が重いものを残すのである。

このエピソードを語る猪瀬直樹は、三島の「フックは習っていない」を「負け惜しみ」と解釈しているが、どうもわかっていないのではないかと思う。負け惜しみではない。習っていない、のである。

嫉妬やマウンティングという「賑やかな」平面「から」考えるのではなく、それよりも前にある孤独から考えなければならない。