陽の当たる側に渡り、七五番地のゆるんだ揚げ蓋をよけて歩く。太陽はジョージ協会の尖塔に近づいている。

今日は暑くなりそうだ。とくにこんな黒服を着ていちゃなおさら。黒は熱を伝導し、反射する(屈折するだっけ?)。
かといってあの明るいスーツを着ていくわけにもいくまい...

なんだか若者気分になってきた。どこか東方の地、朝まだき、夜明けとともに出立。太陽より一足先にぐるりと一周、一日分先回りする。
それをいつまでも続ければ、理論上は一日も年を取らない。砂浜を、異国の地を歩いていき、市の城門へ着くと、そこに歩哨がいる。...

ラーリー・オロークの店まで来た。地下の酒蔵の格子から黒ビールのぶよんとした余臭が漂う。
開け放った戸口の奥から酒場が生姜や茶がらやふやけビスケットのにおいをぷんぷん吐き出す。
繁盛してるんだ、とにかく。市の交通のちょうど終点だからな。たとえばこの先のマッコーリーの店なんかは、場所がダメ。
もちろん北環状線沿いに家畜市場から河岸まで電車が走ることにでもなれば値は一気に跳ね上がるだろうが。
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