0422吾輩は名無しである
2015/01/08(木) 07:24:56.74第一章における夢幻の赤。処女の破瓜に誘われる男の心裡が、映画「アメリカン・ビューティー」より生々しく描かれている。
人工的作風の裏に実体験の重みがかくされているという吉行小説の秘密は磯田光一が指摘している。杉子の原型となった若い素人女はきっといたのだろう。
夢幻の赤に対置する夕暮の赤は最終章にあっけなく、ややシラけた趣きで現れる。初老の主人公にさしたる感慨はない。もともと処女をうばう行為への執着などなかった。
杉子の処女喪失で関係は事実上おわるが、最終章はその「関係」の微妙さをいろいろな小道具(男が哄笑する玩具など)でさりげなくわれわれに伝えている。