まあ、女流作家を誰か出すか。人生でひどい目にまだあってなかった頃の綿矢りさにするか。
綿矢りさ「インストール」十七歳の処女の書いたもの。

 自称変わり者の寝言。
「私、毎日みんなと同じ、こんな生活続けていていいのかなあ。みんなと同じ教室で
同じ授業浮けて、毎日。だって、あたしには具体的な夢はないけど野望はあるわけ。
きっと有名になるんだ。テレビに出たいってわけじゃないけど。」
 光一にそう言い終わった後私は、これは甘ったるいなあ、とぼんやり興ざめした。
光一はそんな私を世の大人の代表として散々なじってくれた。「バカだねみんなと同じ
生活が嫌なんて一体自分をどれだけ特別だと思ってるんだ努力もせず時間だけ
そんな惜しんで、大体あんたにゃ人生の目標がない、だからそうそううだうだと
他の何百人もの人間が乗り越えてきた基本的でありきたりな悩みを引きずってるのさ・」
 眉をひそめ八重歯を唾液で光らせた光一は喋る喋る、五臓六腑に沁みる、
目をギュッとつぶって「もっと言って」とお願いしたら、光一はひゆんで口をつぐんだ。