悪さをしていたタヌキを捕まえた爺さんと婆さんはこのタヌキをタヌキ汁にして食べようと話していた。
タヌキは震えながらなんとか助かる道はないかと一所懸命考えた。
婆さんは臼の中に米を入れ杵で突いて精米をしはじめた。
その作業で婆さんが疲れた頃、タヌキは、これはシメたと思い、仕事を手伝ってやると言って縄をほどかせ、縄がほどけた次の瞬間に婆さんから杵を奪って婆さんを殴り殴り殺した。
横たわる婆さんを見てタヌキは
「ふん、ざまあ見ろ。よくも俺を殺して食おうとしやがって。
さて、次はジジイだ、あいつにも地獄をみせてやる」
そういってタヌキは婆さんの死体に近づいた。
婆さんは目を見開きよだれをたらし苦痛に満ちた鬼の形相のまま事切れていた。
タヌキは婆さんの着物をはぎとり包丁を握ると婆さんの顎に一寸ほど包丁を刺すとそこから股まですーっと包丁で切った。
次の瞬間、大量の血と臓物がどっとあふれ出て土間はたちまち血の海になった。
タヌキは包丁を使って切りながら婆さんの胴体からすべての臓物をとりだし、置いてあったタライに入れ、それから鉈を使い、婆さんの頭と手足を胴から切り離した。
そして一番肉の付いている婆さんの太ももの肉を丁寧に皮を剥ぎ細かく刻んで鍋にいれた、タライに入れてあった臓物も、胃袋や腸からは未消化の食べ物や便をとりだし水瓶の水で丁寧にあらって、一口大に切って鍋に入れた。
肝臓や腎臓は刻んでから焼酎に浸け下ごしらえをした。
そしてかまどに火を入れ切り刻まれた婆さんの入った鍋に水を入れじっくりコトコトと煮込みはじめた。
そして畑に行きネギを一本引っこ抜いて戻ってくると土間に置いてあった壺から味噌をすくって鍋の汁に入れ、畑から引き抜いてきたネギを刻んでそれも鍋に入れた。
そして大量の血で汚れた土間を掃除し、散らばっていた婆さんの骨を片付け、剥ぎ取った婆さんの皮を被り婆さんに化けた。
タヌキは最後にさらしにくるまれたスイカほどの大きさの塊をお盆の上に置いて爺さんが帰って来るのを待った。
「シジイに腹いっぱいババア汁を食わせたあとでこれを見せたらどんな顔をするか楽しみだ」
と言ってタヌキはニタァと笑い、お盆の上に乗っている塊のさらしをめくった。
お盆に乗っていたのは皮を剥ぎ取られた婆さんの頭だった。
そしてその表情は鬼の形相のまま固まっていた。