この無題のエピソードはイントロの役割があるのではないでしょうか。
作者がどんな話を語りたいかを短くかつ印象的に提示しているように思えます。

ここでベースになっているのは警察の追跡から逃れるために麻薬を補給しつつメキシコに向かう男の話です。
彼はあまり説明をしてくれません。
よく「おれたち」と言うのですが行動を共にしている仲間を紹介してくれないのです。
そしていきなりジェーンが登場し、どうやら彼女はずっと一緒にいて、おそらく夫婦だと推測できます。
そして最後は彼女の不意の死で終わります。
しかし、その死に、麻薬好きの奔放な女が死んだという意味以上のものはありません。
たしかにぼくたちはバロウズの経歴を知っているのでこの一節の重みはわかります。
バロウズがタンジールにいた時、離れた場所でジェーンが死んだのではなく、実際は酔った彼がりんごの代わりに撃って殺しました。
つまりここには嘘のアリバイを作る犯人のように罪から逃れたい願望が表れていると言えるでしょう。
しかしそれは別の話です。
これから考えるのはこのエピソードの占める裸のランチ全体での意味です。
そしてそれはルーチンを分類していけば大体わかります。