「ノーベル文学賞を読む」橋本陽介著(2018年、角川書店)

p.9
ノーベル文学賞といえば、ここのところしばらく村上春樹が受賞するかどうかに
話題が限られてきた。
「ノーベル文学賞と村上春樹は秋の季語」などと揶揄されるほどだったが、
それ以外で注目されたのは喜ばしいことだ。

とはいえ、日本の報道で注目されているのは依然として
「日本人が受賞できるかどうか」であって、その文学そのものではない。
カズオ・イシグロが騒がれたのも日系人であるからにすぎないようである。

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それ以上にノーベル文学賞に関する話題でよく出てくるのは
「村上春樹が取れるのか」ということだ。
というより、90パーセント以上はこの話題だろう。

要するに「日本人が認められるかどうか」のみが注目のポイントなのだ。
日本人が「世界に誇る」賞を取るかどうかが問題なのであって、
日本人以外の受賞者やその文学がいかなるものなのかは、関心が持たれていないようである。