「今、世界はどうなってる」
「あなたも世界を気にするようになったんですね」
 おれは自分でも驚いた。ただ、日常をすごすしか知らない視野の狭い男だったからだ、おれは。
「もう、かなり戦ったぞ。世界の半分くらいは征服したんじゃないか」
「反撃があるので、たいした戦果はありません」
「はははは。がっくりくるな。同時に、魔術師どもにざまあみろと思うぜ」
 本当に、肩が落ちるくらいがっくりきた。
「命、終わらせたいですか。もう死にたいですか」
 女はいった。かなり緊張してこの質問を発しているようだった。
「いや、まだまだ生きるよ、おれは。そのうちなんとかなるだろう。だが、心を奪われるんで、作戦の立てようがないんでな」
 女はいった。
「ああ、赤ん坊の頃から聞かされつづけた恐怖の戦士、暗黒の魔剣士、最強の人間、不死者ギャンビチャ。
あなたもまた人間らしい心の持ち主だとみんなに伝えましょう。あなたの伝説は、あまりにも悲しく、この二百年間の矛盾です」
「どんな矛盾だ。バカにされてるようで腹が立ってくる」
「夢と幻の王国の王は、あなたの息子の子孫です」
「そうか」

おわり。