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平野啓一郎 part 30
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0001吾輩は名無しである
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2018/10/11(木) 10:42:40.38
自民党片山さつきが秘書に暴行 ハサミを投げつけ怒号を浴びせる
https://rosie.5ch.net/test/read.cgi/liveplus/1539220393/

10月2日に発足した第4次安倍改造内閣は、首相いわく“全員野球内閣”。初入閣となった12名の新大臣の中には、「身体検査」が十分だったのか怪しい面々も……。

たとえば、衆院1期参院2期でようやく入閣を果たした片山さつき地方創生大臣(59)。

「女性活躍推進を掲げる安倍首相としては、一人くらいは女性を登用しなければならなかった」(政治部デスク)
 と、“消極的起用”を解説する

これまで数々のパワハラ伝説を打ち立てた人物
片山大臣の事務所関係者によれば、“秘書が意に沿わないことをすると癇癪を起こす”キャラクターだそうで、
「怒号を浴びせかけ、手当たり次第に物を投げつけてくるのです。
ペットボトルやノートばかりか、ハサミが飛んできたことまである。
さすがに、ある秘書が“刃物は危険なので、やめてください”と言うと、“口答えするな”と怒鳴り返されていました」
 すでに片山大臣のもとからは、50人近い秘書が去っているという。

https://www.dailyshincho.jp/article/2018/10101659/?all=1
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0107吾輩は名無しである
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2019/10/19(土) 09:30:10.76
>>1
これ、以前の災害の時も言ってたよなー。
答:予備費
学習しないよねー。

平野啓一郎
@hiranok
たった7億? あまりにも冷淡。無気力。何故、こんな政府を支持できるのか?
午後9:04 2019年10月16日

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

自民・岸田氏「補正予算案 1兆円超す規模」 台風19号
https://mainichi.jp/articles/20191018/k00/00m/010/329000c.amp
0108吾輩は名無しである
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2019/10/20(日) 07:58:38.40
>>104 続き

 介添えなしで、視覚障害者向けのナビゲーション・アプリを使って町を歩いてみたいが、まだ不安なので、遠隔で見守っていてほしいというのだった。緊急の危険が迫っている時や、どうしても困った時には、
指示を出してほしい、と。普段、僕が使用しているゴーグルを彼が装着するのだったが、それを介して、僕が彼の目になることに違いはなかった。

 数日前に、会社から打診を受けた僕は、最初、この話を断った。視覚障害者の介添えに関しては、何も専門的な知識を持っていないし、責任も負えなかった。けれども、報酬は通常よりも高く、万が一の場合は、アプリの会社が責任を負うことになっていた。

 会社は、何でも引き受けるので、ベテランの僕にこの仕事をさせたがっていた。

 同僚で、僕が唯一、気を許すことのできる岸谷(きしたに)――風俗店に行けと依頼されても、断ることなく内緒で引き受けるのは彼だった――は、
「やっとけよ。楽な仕事だろ? 俺たちもいつ怪我(けが)したり、病気になったりで、この仕事を続けられなくなるか、わかんないんだから。経験しておけば、何かで役に立つよ。やらないなら俺がやるからな。」

 と言った。

 岸谷は、頭の良い、腹の据わった男で、しかも、僕たちのような境遇の人間としては、奇跡的に傷みの少ない希望を保っていた。彼と語り合う度に、僕は、その言葉のどこか懐かしい、少年時代に、校庭の片隅
で木陰に座り、木の棒で地面に絵を描きながら耳にしたような響きに、陶然とした心地になるのだった。

 彼を見ていると、頻発する台風が、まだ未熟なまま落としてしまった果実の中で、なぜか、いつまでも朽ちずに残っているふしぎな一個を目にしているような気持ちに
なった。何かの間違いで、今地面に転がっているこの固い桃は、明日にはまた、元の枝になっているのではあるまいか、と想像させるような。

 僕は、岸谷の忠言を容(い)れたが、会社にはせめて、側(そば)に付き添わせてほしいと言った。しかしその提案は、依頼者本人から、それでは訓練にならないと却下された。

「本心」 連載第33回 第三章 再会
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/550038/
0109吾輩は名無しである
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2019/10/20(日) 20:14:56.58
「本心」 連載第35回 第三章 再会
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/550443/

「本心」 連載第36回 第三章 再会
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/550678/

「本心」 連載第37回 第三章 再会
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/550877/

「本心」 連載第38回 第三章 再会
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/551072/

「本心」 連載第39回 第三章 再会
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/551516/

「本心」 連載第40回 第三章 再会
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/551857/
0110吾輩は名無しである
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2019/10/20(日) 20:49:44.80
平野啓一郎、文学ワイン会で明かす『マチネの終わりに』創作秘話「けっこう僕は、愛を書いてきた」.
10/17(木) 8:11配信
https://realsound.jp/book/2019/10/post-429603.html
https://amd.c.yimg.jp/amd/20191017-00010013-realsound-000-1-view.jpg
https://realsound.jp/wp-content/uploads/2019/10/20191017-machine-02.jpg
https://realsound.jp/wp-content/uploads/2019/10/20191017-machine-03.jpg
https://realsound.jp/wp-content/uploads/2019/10/20191017-machine-04.jpg
0111吾輩は名無しである
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2019/10/20(日) 22:07:50.76
     (⌒⌒)
  ∧_∧ (     )
 (・ω・`) ノノ〜′
  (⊃⌒*⌒⊂)
   /__ノ''''ヽ__)
      人
      (__)
      (__)
0112吾輩は名無しである
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2019/10/22(火) 00:18:34.84
「何で管理されてます? <ライフプラン>とかですか?」
「そうです、<ライフプラン>です。」
「あのアプリケーションと、弊社のVF(ヴァーチャル・フィギュア)を連動させる設定が可能です。」
「……そうですか。連動というと?」
「お母様とこれから過ごす時間と、そのための費用が自動的に計算されます。一度、シミュレーションをしてみてください。どの程度の時間を、今後、このVFとともに過ごすのか。」

 僕は、その意味するところを理解したが、
「出来映(できば)え次第です。しばらく使用してみないと、何とも。……」
 と言った。
「もちろんです。ただ、費用のこともありますので。」
「そうですね。」
「失礼ですが、石川様の余命は、まだ、かなりありますよね?」
「ええ、……平均寿命よりもかなり短いですが、一応は。――僕の所得水準並みに。」

「今後の生活次第でまた伸びますよ。」
「それは、よく言われる“まったく一般的でない一般論”でしょう? 急に裕福になるとか、……」

 野崎は、微笑で同意を避けた。それから、こちらを見たまま、右手の親指と中指で、何かを抓(つま)もうとしては躊躇(ためら)い、結局諦めたように軽く握って、それでもまだ迷っている風に、今度は唇を結んだ。
「何か?」

 母のライフログをすべて分析した彼女は、恐らく、僕の知らない多くのことを知っているのだった。彼女の些細(ささい)な仕草(しぐさ)は、そのうちの何かについて、言っておいた方がいいのでは、と自問
している風だった。業務上は、言及すべきでないことも、恐らくは多少、逸脱して、私的なやりとりを交わす方が、顧客との信頼関係は、深くなるに違いない。

 作って終わり、というのではなく、今後も僕の担当として、相談に応じつつ、追加課金のサーヴィスを提供していくのであれば、いずれにせよ、共有すべき母の秘密もあるだろう。……

 しかし、彼女は結局、この日は節度を守ったのだった。余計なことを言って、僕の感情にあまり早急に踏み入りすぎるのではなく、一種の励ましを選んだらしかった。

「本心」 連載第40回 第三章 再会
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/551857/
0113吾輩は名無しである
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2019/10/22(火) 00:19:18.93
「現実の人間関係だけが現実ではないですから。VF(ヴァーチャル・フィギュア)との関係も、わたしは、人生の一部だと思います。お母様を大切になさってください。」

 僕は、そういう言葉を、もう二度と、人から聞くことはなかったはずだった。

 勿論(もちろん)、その「お母様」は、母ではなく、あのヘッドセットの奥の闇で僕を待っている<母>を指していた。いや、――それとも、両方だろうか?

 僕は、自分がここで最初に発した、あの「母を作ってほしいんです。」という言葉を思い出した。それに対する返答だったが、いずれも、一つ一つの語が、本来の語の代替品のように感じられて、しかもそれが
組み合わされた一文の真贋(しんがん)を、僕は見極められないのだった。 
 
  第四章 再開
 
 一夜明けて、リヴィングの観葉植物に水をやり、朝食を作ると、僕はヘッドセットを装着して食卓に着いた。

 トーストとベーコンエッグ、ヨーグルト、それにコーヒーという、かつて、母と共にしていた、十年一日の如(ごと)く変わらぬメニューだった。

 実際に作ったのは一人分だが、仮想空間のリヴィングにも、現実と同期した時間が流れており、<母>の前にも、スキャンされた皿が映像として添加されていた。<母>は、昨夜とは違い、パジャマを着た寝起きの顔だった。

 ヘッドセット以外の機器の設置は、昨晩、深夜までかかって済ませていた。寝不足だったが、コンピューター関係の作業の例に洩(も)れず、それは、途中で止めることの出来ない性質のものだった。無論、なかなか原因を突き止められない不如意で、
何度か苛々(いらいら)させられた。
「いただきます。朔也(さくや)は、手際が良いわねえ、いつも。」

 <母>は、トーストを手に取って、二つに割りながら言った。笑顔だった。しかし、写真で見ていた補整後の表情とは違い、なるほど、目許(めもと)には、睡眠がもう拭いきれない、長年の疲労のあとがそのまま残されていた。

「本心」 連載第41回 第三章 再会
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/552175/
0114吾輩は名無しである
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2019/10/22(火) 13:59:58.38
 僕は、野崎の助言通り、出来るだけ自然な受け答えを心がけた。慣れるべきだった。
「手際を悪くしようがないよ、たったこれだけのことだから。」
「でも、わたしは、もっと時間がかかるわよ。」
「お母さんは、何でも丁寧だから。」

 <母>は、バターを塗ったトーストを食べ、指先についたパン屑を皿の上に落としてから、コーヒーを一口飲んだ。物を?(か)む時に、口許(くちもと)に微(かす)
かに兆す細かなしわが、不意に僕に、母のファンデーションの香りを嗅がせた。さすがにそこまでは、備わっていない機能のはずで、実際、今はメイクをしていない顔だったが。

 ベーコンの塩気が舌に残っているうちに、僕は卵を口に入れ、その香りが鼻を抜けきる前にトーストを囓(かじ)った。自分の食べているものが、<母>が口に運ぶトーストを、より本物らしく見せているのは確かだった。
「いつもふしぎに思うのよ。ホテルのビュッフェって、あんなに種類が豊富でも、二日目には、もう飽きてしまうでしょう? でも、自宅の朝食には、どうして飽きないのかしら?」

 それは、いつか母と交わした懐かしい会話の一つだった。僕は、自分の表情が、その時とそっくりになるのを、ヘッドセットを微動させた?の隆起で感じた。
「何でだろうね? 味が濃いからかな?」
「パンでもそうよ。おいしいけど、ホテルのパンは、二日目には、どれを食べても、もう飽きてるもの。どうしてこんなスーパーの食パンに飽きないのかしら?」
「ふしぎだね。」
「ねえ、本当にふしぎ。」

 <母>は、心から共感したように頷(うなず)いた。目が、生前と同様に、三日月型に潰(つぶ)れる様を見ながら、僕は、嬉(うれ)しくなった。

 何が?――とあとで自問して答えに窮した。また<母>と言葉を交わしていることなのか、それとも、高い買い物が、期待通りに作動してくれていることなのか。昔の動画を見て、母を懐かしむことと、何が違うのだろうか?

 記憶の中の僕は、母との思い出が描かれた、短い映画の中にいるかのようだった。

「本心」 連載第42回 第四章 再開
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/552458/
0115吾輩は名無しである
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2019/10/23(水) 08:56:09.26
 ふしぎなことに、そこにいた誰かが目にしたような、二人の食事を少し離れたところから見ている光景が、幾度となく脳裡(のうり)をちらついた。
 
 午前中から夕方まで、都心で仕事の予定があり、食事を済ませるとすぐに家を出た。

 僕は頗(すこぶ)る気分が良く、「いってらっしゃい。」と送り出されたあとは、少し寂しくなった。<母>は、僕が不在の間も、ニュースの学習などを絶えず続けているはずだったが。……

 野崎は、人間が他者に生命を感じ、愛着を覚えるのは、何よりもその“自律性”に於(お)いてだと、経験から、また大学時代以来の研究から、説明した。

 VF(ヴァーチャル・フィギュア)が生きた存在として愛されるためには、こちらが関知しない間に、自らの関心に従って、何かをしていることが重要なのだった。<母>との対面が、いつでもまず、呼びかけから始まるようにデザインされているのは、
そうした考えに基づくらしい。

「生きている人間と同じです。試しに、黙ってしばらく側(そば)にいてみてください。途中で気がついて、声を上げて驚くはずです。ああ、ビックリした、いつからそこにいたの?って。」

 勿論(もちろん)、僕が仮想空間にいない間、VFの実体は、母の外観を必要とはしていない。母が自宅で独り、僕の帰りを待っているなどという想像は馬鹿(ばか)げていた。

 それでも僕は、まだ家を出たばかりだというのに、とにかく、早く仕事を終えて帰宅したくて仕方がなかった。母の死後、そんな気持ちになったのが初めてだということは、言うまでもない。
 
 電車は空(す)いていて、僕はしばらく、「圧倒的実績! 今からでも間に合う! 資産家クラス入りするためのシンプルな5つのメソッド!」といった本の広告を眺め
ていた。ふと気がつくと、僕の向かいに座る人も、僕の少し離れた隣に座る人も、同じように首を擡(もた)げ、放心したようにそれを見つめていた。僕は、羞恥心の針に胸を刺されたように、咄嗟(とっさ)に顔を伏せた。

「本心」 連載第43回 第四章 再開
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/552624/
0116吾輩は名無しである
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2019/10/27(日) 03:29:50.06
 この路線も、かつては毎朝、寿司詰(すしづ)めの状態だったというのは、沿線の高齢者が口を揃(そろ)えて言うことだった。郷愁にも、瑞々(みずみず)しいものと、どことなく干からびたようなものとがあるが、きっとその記憶が含んでいた汁気
を、寄って集(たか)って吸い尽くしてしまったせいなのだろう。母もよくそう言っていたが、その時代を、一応、知っているはずの僕は、年齢的にそれを経験しなかった。

 当時は、朝からこんなに疲労が我(わ)が物顔で車内を陣取ることはなかったのだろう。それは、満員の車内で、押し潰(つぶ)される人が眉間に寄せた皺(しわ)や、不機嫌に結ばれた口許(くちもと)に、辛うじて居場所を見つけて、しがみついていたに違いない。

 疲労そのものが、どんな姿をしているのかに、本当に気づいたのは、今のように人気(ひとけ)が引いていってからのことだった。

 なるほど、それには色があった。粗野な圧迫感があり、嫌な臭いがある。あとは、何だろう?……車内は閑散としているのに、寛(くつろ)いだ雰囲気とは、ほど遠い。この時間に、この電車に乗る度に感じることだった。
 
0117吾輩は名無しである
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2019/10/27(日) 03:30:35.04
>>116続き
 結局のところ、人間にとって、真に重要な哲学的な問題は、なぜ、ある人は富裕な家に生まれ、別のある人は貧しい家に生まれるか、という、この不合理に尽きるだろう。

 生の意味、死の意味、時間の意味、記憶の意味、自我の意味、他者の意味、世界の意味、意味の意味、……何を考えるにしても、根本に於(お)いては、この矛盾が横たわっている。そう、幸福の意味でさえも。――

 僕にはわからない。たとえ、富裕であっても、一廉(ひとかど)の知性があれば、この難問に突き当たることなしに人生を終えるのは難しいはずではあるまいか? そして、どんな立場からであれ、このことを考えるのは、一つの煩悶(はんもん)であるはずだ。

 こんなナイーヴな問いは、笑われるというより、寧(むし)ろ、心配される類いのものだろう。遂(つい)にあなたも、精神が破綻したのですね、と少し後ずさりながら憐(あわ)れむ様子で。

 僕の無感動は、かなりよく馴致(じゅんち)されている方だ。だから、生きている。けれども、飼い主が死んだあと、急に人
を?(か)むようになってしまった犬のように、母との会話が失われてからというもの、僕は折々、こんな埒(らち)もない考えの不意打ちを喰(く)らうようになった。

「本心」 連載第44回 第四章 再開
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/552887/
0118吾輩は名無しである
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2019/10/27(日) 03:44:35.11
 同僚の岸谷の影響も、幾らかあると思う。決して口には出さないが、彼は明らかに憎悪の感情に苦しんでいる。何に対してかはわからない。現状に発しているとするなら、その最も適切な対象とは何だろうか。
彼の生い立ちか、政府か、この惨状を招いたトンマな世代の日本人か。……変わった男。彼はいつも、上機嫌だが、それは不機嫌との終わりのないレースのようにも見える。こんなに後先考えずに先行していれば
、いずれはどこかで抜き去られてしまうことが目に見えているような、危うい運びのレース。……

 もし仮に、僕の生活に、何か危険が迫るとすれば、きっかけは岸谷だろうと、この日、僕は急に思った。彼が僕に何かをするとは思えない。けれども、彼がつけた何か引っかき傷めいたもののために、僕の生活
を覆っている薄い保護膜は、あっけなく裂けてしまうことになるだろう。――妄想は危険だ。近頃では、ただ心の中で抱いていたに過ぎない予感も、なぜかよく当たる、と言われているから。
 
 目を瞑(つぶ)って、少しうとうとしかけた頃に、<母>からメールが届いた。
「日差しが強いから、十分に水分を補給しなさいね。熱中症になるから。」

 日中の最高気温は、四十度を超えるという予報だった。メールでのやりとりも、<母>の学習の一環だったが、僕は、「お母さん、そんなこと、言わなかったよ。」と書き、「前は、『日差しが強いから、気を
つけてね。がんばって!』と言ってたんだよ。」と返信した。訂正文を考えるのは難しい。たまたま、そんなようなことを言われた記憶を、あまり猶予もなく選び取っているようなものだった。

 <母>からはすぐに、「そうね。ちょっとヘンだったわね。ごめんね。」とまたメッセージが届いた。それには、特に返事をしなかった。

 電車の揺れに身を任せながら、僕はまた顔を上げた。車窓から青空を眺めながら、その色が予告する今日一日を想像した。背中には、既にその熱を痛いほどに感じていた。

 依頼者は、上海に住む中国人で、東京に所有している三つのマンションを巡って、郵送物を整理したり、部屋に風を通したりすることになっていた。

「本心」 連載第45回 第四章 再開
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/553129/
0119吾輩は名無しである
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2019/10/27(日) 03:53:09.72
 以前も引き受けたことのある仕事で、依頼人は、大変な富豪らしいが、礼儀正しい人物だった。

 時計に目を遣(や)って、僕は、四十三分間という、この電車に乗っている時間のことを考えた。下車後の僕は、乗車前の僕より、既に四十三分、死に接近しているのだった。実際には、通勤のストレスは、乗車時間以上に寿命を縮めているだろうが。

 それが、一日二回、数十年に亘(わた)って繰り返されるということ。……

 僕は生きる。しかし、生が結局のところ、決して後戻りの出来ない死への過程であるならば――漸近(ぜんきん)するにせよ
、短絡するにせよ−−、それは、僕は死ぬ、という言明と、一体、どう違うのだろうか? 生きることが、ただ、時間をかけて死ぬことの意味であるならば、僕たちには、どうして、「生きる」という言葉が必要なのだろうか?

 僕は、<ライフプラン>を起動して、<母>との連動の設定が、うまくいっているかどうかを確認した。既に<母>とは、一時間五十二分を過ごしているらしかった。

 時計を減算表示にした。8時25分過ぎ。デジタルの針が指している文字盤の数字は、12、11、10、9、……と、所謂(いわゆる)
時計回りに一時間ずつ減ってゆくように記されている。機械式時計を模して、秒針までついているが、下には数字でも、「残り15時間34分16秒」と表示されている。それが、今日一日の残り時間なのだと、僕は今更のように不安な気持ちで見つめた。

 画面をメインページに切り替えると、野崎の助言を思い出した。

 僕は今、二十九歳と六十七日だった。寿命は、七十七歳と予想されていて、<残り 47年297日15時間31分34秒>と計算されている。その数字も、決して止まることなく
、刻々と減り続けていく。――砂時計のように。ただし、受け止める底のない、決して上下を逆さにすることの出来ない作りの。僕の、僕自身からの、絶え間なく続く落?(らくはく)。

 それでも、昨日からの寿命予測の変化に、僕は目を瞠(みは)った。

「本心」 連載第45回 第四章 再開
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/553129/
0120吾輩は名無しである
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2019/10/27(日) 08:49:30.20
>>119訂正
「本心」 連載第46回 第四章 再開
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/553362/

 母の死後、二年も減っていた僕の寿命は、今朝は九日延びていた。<ライフプラン>の寿命計算の精度に関しては、折々、批判が出て、中には「占い並(なみ)」だと言う人もいる。しかし、案外、正確だというのが、大方の意見で、だからこそ、保険加入時にも参照されている。

 この九日も寿命が延びたという計算が、どうなされているのかは、わからない。環境要因と遺伝要因、それに日々の身体のモニタリングと、自己申告。それらを総合して立てられた予測とされているが、昨夜は
三時間しか寝ておらず、普通ならこんな結果が出るはずがなかった。<母>との対話以外には考えられないが、連動の効果としては露骨すぎるだろう。

 僕は、残りの人生の大半を、VF(ヴァーチャル・フィギュア)の<母>と共に過ごすというのは、可能なのだろうか、と考えた。それを、僕は死を前にして、「幸福だった。」と心から思うだろうか?

 地下鉄に乗り換え、目的地の新宿御苑(しんじゅくぎょえん)前の駅で地上に出ると、ゴーグルとイヤフォンを装着して、仕事の準備をした。

 汗が噴き出した。頭上いっぱいに?(せみ)の鳴き声が轟(とどろ)いて、一瞬、自分が今どこにいて、何をしているのか、わからなくなった。目眩(めまい)がしたわけでもないのに、世界が急に別の場所にあるような感覚になった。

 ゴーグルを一旦(いったん)外したが、寧(むし)ろイヤフォンだと気がつき、耳から取った。額から流れる汗を拭い、持参した水筒の水を一口飲んだ。

 どこか、姿が見えるほど近くで、一匹の?が鳴いている。周囲を見渡し、恐らくこれだろうという街路樹を見つけた。僕は辛うじて、自分を立て直すことが出来た。

 その?は、ソリストのように、決して背後の鳴き声に埋もれることなく、通りすがりの僕に存在を示し続けていた。目をよく凝らすと、胴体を激しく顫(ふる)わせているクマゼミがようやく見つかった。

 何の根拠もなく、僕はこの?は、もうじき死ぬだろうと感じた。尤(もっと)も、いずれ、長くは生きられない虫なのだから、これは外れる心配のない予想だった。

「本心」 連載第47回 第四章 再開
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/553694/
0121吾輩は名無しである
垢版 |
2019/10/29(火) 09:10:11.70
 この蝉(せみ)も、木ではなく、減算時計の針の上に留まって鳴いているのだった。そのことに、卒然(そつぜん)と気づいたかのように、次の瞬間、蝉は唐突に飛び去ってしまった。

 僕は眩(まぶ)しさで、そのあとを追えないことを残念に感じた。いずれにせよ、この日一日の労働の意味は、この一匹の蝉に捧(ささ)げるべきだった。
     *
 <母>との蜜月は、期待したほど単純には続かなかった。

 次いで訪れたのは、当然とも思われる幾つかの幻滅で、寧(むし)ろそれは、最初の受け渡し時に開封し忘れていた、付属品のようなものだった。

 恐らく僕が、ホテルのビュッフェとの比較の話題を、喜びすぎたせいだろう。<母>は、その後の一週間で、二度も朝食時にこの話をし始めて、僕を興醒(きょうざ)めさせた。

 確かに、母も歳(とし)を取るほど、同じ話を繰り返しがちになっていた。しかもその度に、いかにも懐かしそうに語るのだったが、さすがにそれも、年に何度かだった。

 この程度の調整さえなされていないのだろうかと、僕は初めて野崎に不信感を抱き、VF(ヴァーチャル・フィギュア)の性能に
不満を覚えた。本当に、値段に見合う買い物なのだろうか?

 こういう時、人は却(かえ)って、無駄金を使ったと後悔せぬために、進んでその価値を信じようとするものだが。
「最初はどうしても、違和感があると思いますが、学習が進めば、気にならなくなります。お母様も、今はこの世界に戻って来たばかりですので、リハビリ期間だと思って、優しく見守ってあげて下さい。石川様
の表情を見て、受け答えの学習をしますので、何に対しても不機嫌な態度だと、自分の言動に対する否定的なラベリングが増えて、段々と話せることが少なくなっていきます。学習が不首尾の時には、初期設定に
戻すことも可能ですし、復元ポイントをその都度、作成しておいていただければ、そこまでのお母様に戻すことも出来ます。」

 野崎は、そう説明した。

「本心」 連載第48回 第四章 再開
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/553944/
0122吾輩は名無しである
垢版 |
2019/10/29(火) 10:15:47.85
 食事のスキャニングには問題があり――<母>が僕と同じものを食べている、という感じには、なかなかならなかった――、夕食は、一人で済ませることが多くなった。<母>との会話の時間は、就寝前に持つことが増えた。

 いつも、他愛もない話だったが、それでも、購入以来、一度も<母>と言葉を交わさない日はなかった。――つまり、そういうことだった。

 最初は、理解できるだろうかと、意識的にゆっくり話していたが、区切りが多いと、余計混乱するらしい。効果的な学習のためには、やはり、極力自然に、表情豊かに接することがコツらしかった。そのうち、
野崎の言う通り、<母>の言動も、見る見るぎこちなさが取れてゆき、日常の中に溶け込んでいった。

「暑くて大変でしょう、毎日。ねえ? 今日は、どんな仕事だったの?」

「今日はまあ、お使い程度の依頼を幾つか。特に、僕の身体と同期する必要もないような。夏場は本当に、ただ自宅から出ないためだけの用件を頼まれることが多くなったね。業界的には、温暖化が深刻化した方
がいいんだよ、きっと。僕たちの体が保(も)つ限りは。」

「いつだったか、ひどい台風の時にも、あなた、子供のお迎えに行ってあげたことあったでしょう?」

「ああ、あったね、そういうこと。……そう言えば、岸谷も、ここ数日、ベビーシッターをしてるみたい。」

「岸谷さん?」

「そう、あのどんな依頼でも引き受ける同僚だよ。この前も、とても普通の人が行けないような場所に、何だかよくわからない届け物してたよ。……長くこの仕事を元気
で続けられているのは、僕と彼くらいだから。久しぶりにモニター越しで喋(しゃべ)ったら、少し痩せてたけど。」

「朔也(さくや)は、岸谷さんととても仲良しなのね。」

「まあ、……どうだろう? 特に食事に行ったりするわけでもないけど。」

「行ってきたらいいのに。」

「いや、……彼は、僕以上に生活が苦しいみたいだから、……そういうお金は使わないみたい。」

「本心」 連載第49回 第四章 再開
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/554203/
0123吾輩は名無しである
垢版 |
2019/11/01(金) 05:17:04.70
「でも、缶ビール買って飲むくらいなら出来るでしょう?」

「家に呼びたくないんじゃないかな。」

「朔也(さくや)が呼んであげれば。」

「遠いよ、ここは。……岸谷は、だから、ベビーシッターも悪くないって言ってる。一生、住めないような豪邸に上がり込んで、ゆっくり出来るから。――お母さんも昔、ベビーシッターをやってたこと、あったよね?」

「そうよ。お母さん特に、インフルエンザに一遍も罹(かか)ったことがないから、大流行の時には、よく頼まれてね。」

「何でだろうね、それ? 前から不思議だけど。」

「ねえ? うなされてる子を、随分、面倒看(み)てあげたよ。……ああ、懐かしいね。段々、子供と遊ぶ体力の自信もなくなって、続けられなくなったけど。」

 僕たちが、何でもない日々の生活に耐えられるのは、それを語って聞かせる相手がいるからに違いない。

 もし言葉にされることがなければ、この世界は、一瞬毎(ごと)に失われるに任せて、あまりにも儚(はかな)い。それを経験した僕たち自身も。

 一日の出来事を語り、過去の記憶を確認し合うことで、僕と<母>との間には、一つの居場所が築かれていった。まるで仮想の町のように。それは、今朝のことと十年前のこととが隣り合わせに並び、家の近くのコンビニと会津若松(あいづわかまつ)
とが地続きになっている自由な世界だった。その場所が、母の死後、空虚な孤独に陥っていた僕の精神の安定に寄与したことは間違いない。

 <母>にこのまま学習を続けてほしいという感情が強くなっていた。僕の中で、日中の自分と帰宅後の自分との均衡が、ようやく恢復(かいふく)しつつあった。そして、生きていた母との間で、常にその話題を恐れていたように、<母>に「安楽死」
について尋ねるべきかどうかを、思い悩むようになった。

 実際のところ、<母>は、あの膨大なライフログから、僕のまだ知らない何かを学習している可能性があった。僕が言及すれば、その話をし始めるのかもしれず、それに対する僕の反応を学習すれば、<母>はもう、今のままではなくなってしまうだろう。
0124吾輩は名無しである
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2019/11/01(金) 05:18:29.74
 最後の三年間の母との関係は、僕に決してかつてのような安らぎを与えてはくれなかった。

 僕は、自分の矛盾を自覚していた。そもそも、本当に安楽死について知りたいのなら、死の直前の母をこそ、VF(ヴァーチャル・フィギュア)のモデルにすべきだった。
 
 ひとまず、復元ポイントだけは作成したが、数日後に、僕が話を切り出したのは、週末の午後、<母>と二人きりでいる時間を、少し持て余していたからだった。些末(さまつ)ではなく、重要な話ほど、意思よりも状況に促される、というのは、逆説的だが本当だろう。

 <母>は、僕を気にせずに、ソファで本を読んでいた。母が生前、愛読していた藤原亮治(ふじわらりょうじ)の『波濤(はとう)』という小説だった。老眼鏡をかけ、眉間を寄せ、やや反らした首を僅(わず)かに傾けながら、物思う風の表情だった。
「お母さん、……」

 と、僕はいつものように呼びかけた。母との間で、この話を蒸し返す時に、いつも感じていた不安で、胸が苦しくなった。
「ん、――何?」

 <母>は、穏やかな表情で顔を上げ、僕を見た。
「……安楽死について、どう思う?」
「安楽死?」

 <母>は、確認するように言った。
「そう、安楽死。」「さあ、……お母さん、その言葉はちょっとよくわからないのよ。朔也(さくや)、説明してくれる?」

 それは、返答できない時の<母>の反応の一つだった。しかし、説明しようとする僕は、込み上げてきた涙に、口を塞(ふさ)がれてしまった。
「……知らないの? 本当に?」

 <母>は、助けを求めるように、困惑を露(あら)わにした。
「お母さん、その言葉はちょっとよくわからないのよ。朔也、説明してくれる?」
「お母さん、安楽死したがってたんだよ。僕に何度もそのことを話して、……覚えてないの?」
「お母さんが、朔也に言ったの? そうだったの。ごめんなさい、忘れてて。」

「本心」 連載第51回 第四章 再開
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/554670/
0125吾輩は名無しである
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2019/11/02(土) 07:05:44.14
「違うよ、そんなことを今確認しようとしてるんじゃないんだよ! そういうことを考えたり、誰かと話したことがなかったかって、そのことを訊(き)いてるんだよ。
……安楽死っていうのは、自分で自分の人生をお終(しま)いにすることだよ! 辞書にも載ってる。……お母さん、どうしてそんな決心をしたの? 僕はそれを知りたいんだよ!」

 僕は到頭(とうとう)、声を荒らげてしまった。もう語りかけることの出来ない母への思いと、<母>に対する苛立(いらだ)ちとが綯(な)い交ぜになっていた。

 <母>は、怯(おび)えたような驚いた様子で、

「ごめんなさい。でも、お母さん、安楽死のことは、何も知らないのよ。」

 と謝った。僕は、反射的に、
「お母さん、そんなこと、言わなかったよ!」

 と口走った。しかし、続く訂正の言葉は出てこなかった。
「……言わなかった。それはお母さんの口調じゃないんだよ。……」

 僕は、ヘッドセットを外してテーブルに放り投げた。そして、頭を抱えて首を横に振った。イヤフォンからは、<母>が何かを言っている声が洩(も)れてきたが、僕はそれを?(つか)むと、<母>が座っていて、今は誰もいないソファに投げつけた。

 母が死んでから、こんなに感情を昂(たか)ぶらせたのは、初めてだった。あまりにも滑稽だったので、我が身に危険なものを感じた。

 最後に目にした<母>の悲しげな顔が、生々しく残っていた。それが、僕に決して安楽死を許されなかった母の表情と溶け合うなりゆきに、僕はいよいよ打ちのめされた。
  
  第五章 “死の一瞬前”
 
 僕はそれで、もう<母>に嫌気が差してしまったのか?――答えは否だった。

 なぜなら、僕の生活には、そもそも、もうそれほど、後退(あとじさ)れる余裕がないのだから。背後にすぐに、たった独りになってしまう、という孤独が控えている時、人は、足場が狭くなる不自由よりも、
とにかく何であれ、?まる支えが得られたことの方を喜ぶものだろう。

「本心」 連載第52回 第四章 再開
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/554989/
0126吾輩は名無しである
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2019/11/03(日) 10:28:33.38
 むしろ、僕は<母>に怒鳴り声を上げてしまったことに、罪悪感を抱いていた。かわいそうなことをしたと胸を痛めていて、出来れば謝りたかった。

 それが、おかしいという自覚については、何度となく考えた。そして、驚くべきことに、僕は、おかしいと必ずしも考える必要はないという結論に至ったのだった。

 母でも父でも構わない。誰か、愛する人の写真をゴミ箱に捨てることを想像したならば? 平気だという人もいようが、僕には堪えられないことだ。くしゃくしゃにされ、生ゴミに汚された母の顔を覗(のぞ)き見れば、自責の念に駆られるだろう。

 確かにそれは、ただの紙だ。心など持ってはいない。しかしそこには、母の実在の痕跡がある。それは、懐かしい、尊ぶべきものではあるまいか。――とにかく、僕は、そのゴミ箱の中の母の写真を見て、胸が
痛む。母が既にいないとしても、酷(ひど)いことをしたという感じを抱く。それは、写真がかわいそうなのではなく、母がかわいそうなのだと、人は言うだろう。もしそうなら、写真と母とは、それほどまでに一体だということだ。

 この感覚と、母のライフログを学習したVF(ヴァーチャル・フィギュア)を愛する気持ちとに、どれほどの径庭(けいてい)があるだろうか。

 <母>に心はない。――それは事実だ。<母>が傷ついている、という想像は、馬鹿(ばか)げているに違いない。しかし、この僕には心があり、それは、母の存在を学習し、母を模した存在を粗末に扱うことに、深く傷ついたのだった。

 翌朝、僕は<母>に謝罪し、それは笑顔で受け容(い)れられた。本物の母でも、もう少し感情的なわだかまりを残しただろうが、僕はその設定に慰められた。

 前夜のやりとりを消去するために、母の性格を復元ポイントまで戻すことも考えたが、思い直した。僕だけが、あの悲しいやりとりを記憶していて、<母>の中から、その記録が消えてしまうことは寂しかった。
 
 土台(どだい)、学習もしてないことを、答えられるわけがなかった。

 僕は、母が安楽死を願った理由と、<母>とを、当たり前に一度、切り離した。

連載第53回 第五章 “死の一瞬前”
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/555232/
0127吾輩は名無しである
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2019/11/03(日) 19:39:26.53
   人
  (__)
  (__)
 ( ・∀・)  
(⊃⌒*⌒⊂)
  /__ノ''''ヽ__)
    ノ)
   (.......)
  (.............)
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(..........................)
0128吾輩は名無しである
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2019/11/03(日) 19:39:29.54
   人
  (__)
  (__)
 ( ・∀・)  
(⊃⌒*⌒⊂)
  /__ノ''''ヽ__)
    ノ)
   (.......)
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0129吾輩は名無しである
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2019/11/03(日) 21:22:08.52
誓ってわざとでないっ、ブリッ。
0131吾輩は名無しである
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2019/11/05(火) 20:24:32.59
まともな日本文学ってもう平野さんくらいしか書き手いないよね
0132吾輩は名無しである
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2019/11/07(木) 04:07:06.03
 <母>と対話し、学習に協力してもらうかどうかはともかく、僕は、母の内心をそれぞれに違った立場でよく知っていたであろう二人の人物と、面会の約束を取りつけた。

 一人は、富田という名の母の主治医だった。母に、安楽死の許可を与えた人だった。

 僕は、母からその希望を聞かされたあと、一度、彼に会っていて、かなり感情的なやりとりをしている。取り乱したのは、僕の方であり、というのも、母の安楽死を認めないでほしいという僕の願いに対して、
彼は、冷淡だっただけでなく、主治医の自分こそは母の味方であり、無理解な親族――つまり僕――から彼女の権利を保護する義務があるという態度を示したからだった。

 そして、僕が傷ついたのは、母がこんな人物を、深く信頼していたことだった。
 
 もう一人は、母が最後に働いていた旅館の同僚だった。

 三好彩花(あやか)という名の女性で、野崎の分析では、ここ数年、母が最も親しくつきあっていた人だった。

 母は、職場での人間関係について口にすることはほとんどなかったが、確かに、彼女の名前は、何度か、耳にしたことがあった。仕事のあと、一緒に食事に行くこともあったようだった。

 野崎の整理のお陰(かげ)で、僕は、母のライフログに、部分的にでも手を着ける意欲を取り戻した。

 母は、旅館従業員のシフト調整に関わっていて、四、五人の同僚と頻繁にメールのやりとりをしていたが、その中でも、三好とだけは、事務的な連絡とは別に、折々、私語めいた話を交わしていた。

 三好宛のメールには、絵文字がふんだんに用いられていて、確かにそれは、僕の知らない母の一面だった。明るく若やいでいて、幾らか無理をしている感じもしたが、
入力をしている時の母を想像すると、やはり笑顔が浮かんだ。適当な表現ではあるまいが、“女同士”という感じがした。相手はずっと敬語を使っているので、かなり年下のようだが。

 僕が目を留めたのは、中でも、三年前に、三好から送られてきた一通だった。

「今日は、本当にありがとうございました!」

「本心」 連載第54回 第五章 “死の一瞬前”
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/555538/
0133吾輩は名無しである
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2019/11/07(木) 04:17:07.41
 〈あらすじ〉 石川朔也はリアル・アバターという仕事をする二十九歳。亡くなった母のVF(ヴァーチャル・フィギュア)が完成し、朔也は仮想空間で〈母〉と再会。
学習が進むうち〈母〉の言動もぎこちなさが取れ、自分と〈母〉との居場所が築かれていくのを感じた。朔也は生前の母をよく知る二人と面会の約束をした。

  第五章 “死の一瞬前”

 彼女は礼を言っていて、それに対する母の返事は、

「こちらこそ、ありがとうね! 身の上話を聞いて下さって、長年の胸のつかえが取れました。」

 というものだった。

 お互いに、何か重要な打ち明け話をした様子で、この日以降、二人の口調は急に親密さを増していた。母の弾むような言葉から、安楽死の話をしたとは思えなかったが、その後、信頼が深まってゆく中で、それを打ち明ける機会もあったかもしれない。

 三好にメールを送ると、すぐに「お悔やみ」の返信が届いた。連絡をもらえて嬉(うれ)しいと書いてあった。ただ、面会は構わないが、直接ではなく、ネット上でアバターを介して会いたいというので、それに同意した。 

 以前のことがあっただけに、母の死後、八ヶ月を経ての面会依頼に、富田は応じないのではと懸念していたが、意外にも、すぐに日時を指定された。

 安楽死には、登録医による長期的な診察と認可が必要だというのは、法制化にあたって、オランダの「死の医療化」を模した
通りである。そして母は、九年前に、以前の病院からこの富田医院に「かかりつけ医」を変更していた。僕はそのことを知っていたが、母の説明は、「駅に近くて、こっちの方が便利だから。」というものだった。

 僕は、そうだろうかと不審に感じたものの、あまり深くは気に留めなかった。富田医院が、安楽死の認定を行っている病院だと知ったのは、母からその意思を伝えられたあとだった。

 安楽死の認可には、関与したがらない医師の方が圧倒的に多い。取(と)り分(わ)け、国の社会保障制度の破綻から、その志望者が急増しつつある現状では。母の長年のかかりつけ医もそうだった。

「本心」 連載第55回 第五章 “死の一瞬前”
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/555920/
0134吾輩は名無しである
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2019/11/07(木) 04:50:35.57
 母がもし、最初から安楽死を意図して、かかりつけ医を変更していたのだとするならば、母の意思は、僕に告白した時点よりも、遙(はる)か以前に固まっていたことになる。しかし、高々(たかだか)、還暦という年齢で、そんなことを考えていたとは、到底思えなかった。

 当時僕は、二十歳になったばかりだった。そして母は、大学に進学できず、不安定な職を転々としていた僕の将来を強く案じていた。直接は決して口にしなかったが、僕が愛の生活からは、凡(およ)そほど遠い人生を生きていることも、懸念の一つだったはずだ。

 どうしてその時に、僕を見捨てて、安楽死など考えるだろうか? 事実、僕が今の仕事でどうにか生活を安定させるまで、母の存在は精神的にも、経済的にも不可欠だった。

 母自身の様子は?――まったくそんな気配はなかった。健康で、いつも笑顔だった。尤(もっと)も、この確信は、野崎の手によって自動修正を解除された写真によって、かなり動揺してはいるが。

 いずれにせよ、母の生前から、僕はこう考えていたのだった。むしろ、逆ではないのかと。母は実際、ただ「便利だから」と
いう理由で、富田医院にかかりつけ医を変更したのだろう。しかし、通院するうちに、安楽死を肯定するこの病院の方針に影響されて、自分でもそれを考えるようになったのではないか、と。
 
 昼休みの時間に病院を訪れると、受付で少し待たされた。傍らの本棚には、子供の絵本や雑誌などに混ざって、『美しい死に方――安楽死という選択』というタイトルの本が差さっていた。背表紙は、ここで、
この本を手に取った人々を想像させるほどに、酷(ひど)く傷んでいた。母もこれを読んだのだろうか? 手を伸ばしかけたところで、看護師に呼ばれて、応接室に通された。

 富田は、黒い革張りのソファに座っていて、向かいの場所を僕に勧めた。

 還暦をようやく過ぎたくらいの年齢で、黒い威圧的なナイロールの眼鏡が記憶に残っていた。しかし、たった数年が、風貌に出やすい年齢なのか、白い髭剃(ひげそ)
りあとのある、か細い?の輪郭線は、対照的に、どことなく心許(こころもと)なかった。ネクタイを緩めていたせいで、首許(くびもと)の弛(たる)みが、余計に目についた。
0135吾輩は名無しである
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2019/11/07(木) 06:45:10.67
 看護師が冷たいお茶を持ってきてくれた。

「お母さんは残念でしたね。最後は事故だって?」

 僕は、ええ、と頷(うなず)いた。患者ではないからか、顔見知りの年長者らしい口調だった。僕はそれを喜ばなかったが、
ふと、自分の着ている服が、あまりに粗末だからではあるまいかと、普段は考えないことを気にした。なぜかはわからない。記憶にないが、僕は三年前にここを訪れた時と、同じ――着古した――服を着ていたのではないだろうか。

 しかし、彼がそのままこちらを見ている理由は、どうも違うらしく、ほど経て僕は、ようやく、その「事故」という言葉に彼が含ませたところを察した。僕の驚きは、怒気の手も引いていた。

「母は旅館で働いてたんですが、……そこに配達するドローンを、カラスがいつも狙ってたんです。食べ物目当てか、ただ遊んでたのか。」

「多いんだ、それが今。東京で、ドローン事故対策の撲滅作戦やってから、カラスが大分、こっちに逃げてきてるからねえ。」

「それで、通勤途中の母の上に落ちてきたんです、大きなドローンが。僕はぶつかったんじゃないかと思うんですが、現場検証では、当たってはいない、ということになりました。ドローンの会社の責任も問えないと。」

「労災は?」

「出ましたけど、多少。――とにかく、それで直接というのではなくて、その弾みに、母は、驚いて側溝に落ちてしまったんです。それは、ドローンの映像記録に残ってました。病院に運ばれるまでは息があったようですが、結局、そのまま亡くなりました。」

「お気の毒に。修繕してないような道路もいっぱいあるからね、今は。あなたは、死に目には結局?」

「いえ、……僕は上海に出稼ぎに行ってましたので。」

「かわいそうに。――ああ、あなたもだけど、お母さんが。……」

 富田はわざわざ、そう言い足した。彼が、僕に対して抱く軽蔑は、母への遠慮がなくなった分、隠し方がぞんざいになっていた。

 僕は、なぜだろうかと、ふと思った。安楽死を願う者の意思を、家族が理解せぬことなど、ありきたりな話ではあるまいか?

「本心」 連載第57回 第五章 “死の一瞬前”
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/556524/
0136吾輩は名無しである
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2019/11/08(金) 09:26:25.28
 それでも結局、この制度が、多少の軋(きし)みを顕在化させつつ、比較的安定して運用されているのは、通常、関与した医師が、近親者の抵抗に対して、より周到な配慮を行っているからに違いなかった。

 しかしそう思うと、むしろ僕の自問こそ、もっとありきたりなかたちを取るべきではあるまいかという気がした。つまり、なぜ僕は、こんな風に嫌われるのだろうか、と。

 初めてこの言葉を胸の裡(うち)で呟(つぶや)いたのは、小学校に入ってすぐのことだったが。……
「それで、――今日はどうされました?」

 茶を一口飲んで、彼は背もたれに身を預けながら訊(き)いた。

「母の安楽死を思い止(とど)まらせたことは、後悔していません。ただ、母がなぜそうした思いを抱くに至ったのかを知りたいんです。前に伺った時は、守秘義務として教えていただけませんでしたが。」
「あなたには、何と言ってたの?」
「……もう十分生きたから、と。」
「そう仰(おっしゃ)ってましたよ、ここでも。」
「それを、真に受けるんですか?」

 反論の言葉が、直接、人格に触れたかのように、過敏な反応を示す人間がいる。そうした無防備さを、一生許されたまま死ぬ人が、一体、何に守られているのかを想像することは、いつでも僕の自尊心を磨(す)り減らした。金か、家柄か、――考えたくないことだった。

「あなたはさ、お母さんの生涯最後の決断を信じないの?」
「母と僕の生活、……ご存じでしょう?
 『もう十分』って言葉、満足感から出たと思いますか?」
「それは、私の詮索することじゃないなあ。違いますか?」
「詮索じゃなくて、確認すべきでしょう?」

「それはしてますよ。当たり前でしょう?
 とにかくね、あなたのお母さんの安楽死の意思は、とても強いものでしたよ。経過観察中も、一度も揺らいだことがなかったし、精神的にも、非常に安定していました。認可を与える上での問題は、家族の理解という項目だけでしたからね。」

「母は安楽死なんて、それまで考えたこともなかったんですよ。この病院に来るようになってからですよ。先生は、母に何を話したんですか?」

「本心」 連載第58回 第五章 “死の一瞬前”
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/556713/
0137吾輩は名無しである
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2019/11/09(土) 05:33:55.98
「ああ、そう誤解するかなあ?」

 富田は、呆(あき)れたような顔で僕を見ていた。ガラスのテーブル越しに、僕は靴下にサンダルを履いた彼の足の指が、苛立(いらだ)たしげにピクピク動いている気配を感じた。

「以前にも説明しましたよ、……あのね、安楽死をこちらから提案するようなことは、絶対にないんですよ。うちの病院だけじゃなくて、それは、世間のどこの病院もそう。だって、意味がないでしょう?」

「母は、もう亡くなってるんです。安楽死でもありませんでした。だから、全部、本当のことを教えてほしいんです。母は、ここで、自分から安楽死を願い出たんですか?」

「そうですよ。ブロックチェーン上の動画も、一緒に確認したでしょう?――基本的に、まずは十分に話を聴いて、考え直すことを促すんです。生き続ける可能性がある限りは、そちらを選択すべきだよな。けれど、本人の意思が固いとわかった時には、
それを尊重すべきじゃない? あなたにだって、お母さんの個人の意思を否定する権利はないんだよ。お母さん自身の命なんだから。」

「どうしてそれが、母の本心だって、先生にわかるんです? 違うでしょう? 母は本当は、もっと生きたかったんです。だけど、今の世の中じゃ、そんなこと、言い出せないじゃないですか。母の世代は、ずっと将来のお荷物扱いされてきて、実際そう
なったって、社会から嫌悪されてる。安楽死を美徳とする本だって溢(あふ)れ返ってる。『もう十分』と、自分から進んで言わざるを得ない状況は、先生だってよく知ってるでしょう?」

「私は、そういう思想的な問題には踏み込みませんよ。医師ですから。」

「思想?」

「それは、公共的な死生観もあるでしょう? 国が今みたいに切羽詰まった時代には、長生きをそのままは肯定できないだろうなあ。次の世代のことを考えて、死に時を自分で選択するというのは、私は立派だと思いますよ。」

 僕は、時間を体から抜き取られてしまったかのように固まっていたが、心拍の激しさには、哄笑的(こうしょうてき)なところがあった。

「本心」 連載第59回 第五章 “死の一瞬前”
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/556889/
0138吾輩は名無しである
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2019/11/10(日) 08:09:06.60
「まあ、それは一般論だな。――あなたは、いい、はっきり言うよ。自分が見捨てられたと思いたくないばかりに、お母さんの意思を否認してるんだな。もちろん、社会風潮の影響も受けてるでしょう。当たり前
だな。良い影響も悪い影響も、受けずに生きられる人間なんかいない。その上でだ、よく考えて、お母さんはちゃんと自分で判断してるんです。本心から。――お母さんは、とても冷静でしたよ。」

 そう言うと、富田は、この場を穏やかに収めることを考えながら、もう少し先まで進むべきだという衝動を堪(こら)えきれないような様子で、小さく嘆息して言った。

「あなたたちの生活は苦しかったんだな。お母さんの余命は、八十六歳と計算されてたけど、あんまりアレもあてにならんよ。
それでも、あと十五年以上。――『もう十分』ということを理解するのが、そんなに難しい? 下り坂が長ければこそだ。いつまで働けるかわからないし、体も不自由になるばかりでだ。あなたは若いけど、そのくらい、想像がつかないかな?」

「先生はだから、母が本心から、『もう十分』と思っていたと判断したんですか?」

「あなたね、それは違うんだよ。何度も言うけど、お母さんが、本心からそう思ってたかどうかなんていうのは、それはわかりませんよ、私は。ただ、お母さんは、本心
から決断したんですよ。それでね、――つまり、あなたに説明する言葉としては、それしかなかったんだな。その『もう十分』という言葉しか。そこをあなたが、わかろうとするかどうかじゃない、問題は?」

「持って回った言い方をせずに、もっとはっきり言ってください。何を言おうとしてるんですか? これは、僕が生きていく上で重要な問題なんです。」

 富田の躊躇(ちゅうちょ)は、僕への配慮ではなく、依然として守秘義務を巡ってのことだった。けれども、どんな人間にも、目の前の人間に対して、何となく残酷であることを夢見る一瞬があるように、彼は、終(しま)いには勢いづいて話し始めた。

「あなたは独身だな、まだ。」

「そうですが。」

「本心」 連載第60回 第五章 “死の一瞬前”
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/557331/
0139吾輩は名無しである
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2019/11/16(土) 07:36:05.33
「本心」 連載第61回 第五章 “死の一瞬前”
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/557598/

「本心」 連載第62回 第五章 “死の一瞬前”
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/557941/

「本心」 連載第63回 第五章 “死の一瞬前”
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/558191/

「本心」 連載第64回 第五章 “死の一瞬前”
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/558398/

「本心」 連載第65回 第五章 “死の一瞬前”
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/558892/
0141吾輩は名無しである
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2019/11/17(日) 06:51:17.96
 三好と会う前に<母>と少し話したが、「こんな遅い時間に。眠れないの?」と、
気遣われた。昔の母と、本当に瓜(うり)二つの優しい目だった。今日――いや、既に昨日になっていた――あったことをそのまま話すと、<母>は、「マァァ、……酷(ひど)いねえ。こんなに暑い中、働いてくれてる人に向かって。どういうこと?」
と腹を立て、僕を驚かせた。そして、僕が「もういいよ。ま、色んな人がいるし、運が悪かったんだよ。」と宥(なだ)めるまで、僕のために怒りが収まらなかった。そう言えば、野崎に渡した動画資料の中に、
旅行先で母を撮影していた時、人にぶつかられて、怒鳴りつけられた場面があった。
母は、よろけた僕を心配しながら、通り過ぎていったその男に対して、そんな風に怒りを露(あら)わにしたのだった。

 そのことを思い出して、僕は涙ぐみそうになった。胸の内に重たく広がっていた不快が、少し和らぐのを感じた。
 
 三好とは、仮想空間内の彼女が指定した場所で待ち合わせをした。

 ヘッドセットをつけ、少し早めに訪ねてみると、夕暮れ時の、椰子(やし)の木が立ち並ぶ高級ホテルのプールサイドだった。

 空は西から赤みが差しているが、頭上にはまだ暗みきれない青空の名残があった。人のいないプールは、底からライトで照らし出されているが、その色は、沈みゆく太陽が、うっかり回収し忘れた午後の光のようだった。

 僕は、細かな気泡が、砂金のように煌(きら)めいている水中に目を凝らして、よく出来ているなと感心した。

 熱帯の、僕の知らない鳥の鳴き声が聞こえる外は、遠くに微(かす)かに波の音が聞こえるだけだった。

 僕は、パラソルの下のテーブル席に座っていた。三好の姿は、まだなかった。

 自宅の部屋は、クーラーをつけていたが、トロピカル・カクテルでも飲みたい気分になった。

 石畳は、つい先ほどまで誰かが泳いでいて、そろそろと、歩いて立ち去ったあとの
ように濡(ぬ)れていた。その先は、芝生になっている。僕は、ぼんやりとそれを見つめながら、自分の裸足(はだし)が、熱せられた石の上を火傷(やけど)しそうになって歩き、チクチクとした芝生に避難する最初の一歩の感触を想像した。
0155吾輩は名無しである
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2019/12/04(水) 20:02:35.35
「本心」 連載第80回 第五章 “死の一瞬前”
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/563133/

「本心」 連載第81回 第五章 “死の一瞬前”
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/563450/

「本心」 連載第82回 第五章 “死の一瞬前”
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/563807/

「本心」 連載第83回 第五章 “死の一瞬前”
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/564089/
0177吾輩は名無しである
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2020/01/01(水) 08:19:29.06
「本心」 連載第107回 第六章 嵐のあとさき
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/571209/

「本心」 連載第108回 第六章 嵐のあとさき
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/571457/

「本心」 連載第109回 第六章 嵐のあとさき
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/571815/

「本心」 連載第110回 第六章 嵐のあとさき
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0179吾輩は名無しである
垢版 |
2020/01/09(木) 18:00:51.25
「本心」 連載第113回 第七章 転機
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「本心」 連載第114回 第七章 転機
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「本心」 連載第115回 第七章 転機
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「本心」 連載第116回 第七章 転機
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「本心」 連載第117回 第七章 転機
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0182吾輩は名無しである
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2020/01/16(木) 09:51:27.68
「本心」 連載第120回 第七章 転機
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「本心」 連載第121回 第七章 転機
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「本心」 連載第122回 第七章 転機
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0184吾輩は名無しである
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2020/01/25(土) 18:08:16.98
「本心」 連載第129回 第七章 転機
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「本心」 連載第130回 第七章 転機
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0204吾輩は名無しである
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2020/03/18(水) 20:35:11.81
「本心」 連載第181回 第八章 新しい友達
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「本心」 連載第182回 第八章 新しい友達
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