編集長から
島田雅彦の皇居
古市憲寿の高層ビル
◎「彗星の住人」に始まる島田雅彦氏の〈無限カノン〉三部作(二〇〇三年完)は、十九世紀末の長崎芸者の悲恋から百年におよぶ血族四代の運命を描いた氏の代表作だ。
なかでも中心的な主人公カヲルは禁断の恋に落ちる。その相手、不二子は皇太子に見初められた妃候補だったのだ。
「スノードロップ」(一四〇枚)は令和の時代に転生した〈無限カノン〉復活作といえよう。
心を病んだ皇后として、皇居の森に閉じ込められた不二子は密かな手段を得て、森の外との危険な交信を始める……。
島田氏にしか書けない想像力と政治性の融合が、鮮やかに再起動する
◎昨年、「平成くん、さようなら」で話題を集めた古市憲寿氏の最新作「百の夜は跳ねて」(二三〇枚)は新鮮な驚きに充ちていた。
主人公は高層ビルのガラス清掃員。彼の眼前にはビル内の部屋=生が無数に連なり、背後には巨大な都市が広がる。
致死的な高さで作業をおこなう彼は何を見、何を思うのか――この小説は決定的に新しい。
新潮編集長 矢野 優

まあまあ面白そうだが、「かっぱぐ」的な要素が何処にあるのか見てみたいね