鴎外の話を出すと追い出しにかかる御仁がおられるようなので、漱石に話を戻す。

鴎外は漱石の創作活動を気にかけていた。
これは『三四郎』に対して『青年』が書かれた事で分かる。
漱石が鴎外の創作活動を気にかけていたかどうかは、分からない。
新刊を送りあってはいたようであるが、二人の接点は乏しい。

『三四郎』と『青年』の対決では、前者の方を私は採る。
というより、『三四郎』は漱石の長編の中で最も香気に溢れ魅力的な作品では無いだろうか。この後の作品は深刻に見える。しかし深刻だから深いというわけでは無い。