「翌圧されたものの回帰」が、小説についての書評にも出てくる。

津島祐子「黄金の夢の歌」

【「夢の歌」は実際の歌というよりもむしろ、見知らぬ男の子らの声を通して出現する。その中には、マケドニアの男の子(アレクサンダー大王)もいる。また、それは、「トット、トット、タン、ト」という騎馬の蹄(ひづめ)の音として、唐突に、かつひんぱんに出現する。これはまさに非人称的であり、「夢の歌」がノスタルジーではなく、「抑圧されたものの回帰」(フロイト)としてあるということを示している。ちなみに、この音はかつて青森出身の作家が書いた「トカトントン」という音を想起させる】

(柄谷行人)