話のキーになっているのは互いの呼び方。
主人公とヒロインは互いを「青葉くん」「山吹さん」と呼んでいるのだ けど、この距離感がミソ。
かつては「灯里ちゃん」「きぃくん」と呼び合っていた二人の間に何故ここまで距離が生じてしまったのか?
喜一郎は灯里が呪いを受けそうになった瞬間、飛び出して身代わりになろうとした事からも分かる様に
灯里を憎からず思っているのだ けど、問題は幼馴染が可愛くなりすぎた事と、思春期を迎えて自分の平凡さに気付いてしまった事。
かつては灯里を何の迷いもなく守るヒーローの立場にあったはずの自分が世界一可愛い灯里を守るには
あまりにも平凡すぎると勝手に距離を置いた事から全ての問題は始まっているのだが、
面白いのは喜一郎が「だって僕みたいなのが傍に居たんじゃ灯里ちゃんが迷惑するでしょ?」という
実にいじましく、情けない言い訳を繰り返している事。

この自分の気持ちにフタをして、好きな女の子と距離を置く理由に「相手が迷惑するから」という言い訳を用意する辺り
実に思春期的な、自分に自信は無いが傷付くのも嫌だという「格好悪さ」がよく描けている。
要するに完全に予防線を張らないと身動きできなくなっている思春期少年の姿をこれでもか と描いているのだが、
青春ミッションを通じて少しずつ自分の気持ちに気付いていく喜一郎だけど、クラスメイトに灯里との関係を取り沙汰されただけで
「山吹さんとは何の関係もない」と灯里が見ている前で宣言してしまう辺りも不器用な自己防衛本能丸出しで実に宜しい。