『吠えない犬と噛めない猫』

10万字強。読了。
一言で言えば綺麗にまとまったシリアスな一作

大国に滅ぼされた小国出身の奴隷でイヌと呼ばれる青年が主人公。現在は滅ぼされた小国のレジスタンス盗賊団で暗殺者となっている。
レジスタンス盗賊団が大国の町に略奪行為を働いた際に、ヒロインでネコと呼ばれる孤児の少女が戦利品として奪われてくる。
主人公は夜目が利くという能力を持っていて、暗殺稼業をするうちに自分の意志や脱出したいという希望を失っている。
ヒロインは常識を超えるほど身軽な身体能力を持っていて、孤児でありながら天真爛漫な性格で主人公とお互い好意を深めていく。
そんな二人の苦境からの脱出譚といえるかな。

文章は特にうまいとは思わないけれどへたでもない。書き慣れた感じでかなり読みやすい部類だと思う。
気になる部分も多少あったけれど、特に揚げ足取りはしなくてもいいレベルで楽に読了できた。
主人公は暗殺者だし、ヒロインも主人公を助けるため暗殺者になろうとしている状況ゆえに、スプラッターな残酷表現が多数あるので苦手な人は要注意。
ハッピーエンドではあるが、満身創痍のうえでの苦い勝利ともいえるので爽快感に欠けると思う。
個人的には結構好きな部類のお話。

コンテストとして考えれば
『エンターテイメント』という意味で微妙。綺麗すぎるエンドで続編の期待ができないこと、血の出過ぎな部分もマイナスポイントで厳しい感じがする。
だけど設定もよく練られているし、とてもよくできた作品だから、他の主旨のコンテストだとイイ線行くんじゃないかな。