>>948

 今から7,500年ほど前、リルス・ズグトモーレは、ファシール合星国生まれのカミラ・エリスナーと呼ばれていた。
 彼女は、ダン・グレイウッドという航宙士の卵と恋仲にあり、彼の子供を身ごもっていた。
 二人が乗る宇宙船は、銀河系の居住可能惑星を探査する任を帯びていたが、事故によりオースに墜落してしまった。
 
 今から2,500年ほど前、冷凍睡眠の期限が切れて死亡したカミラ・エリスナーは、エルフの女性・リルス・ジンゼリーンとして転生した。
 その頃には、ダンが転生してから既に5,000年以上が経過していた。
 やがて、同じく不定命の存在と化していたルスック・ズグトモーレ(転生前はゲイン・ファグリア・バーハッヅというダンの友人)と出会ったリルスは、
 「転生前から好きでした!!」というルスックの言葉にほだされて結婚することに。
 固有技能として鑑定を持っていたルスックであったが、転生したダンを滅ぼしたことが露見(※)して、リルスに滅ぼされることとなる。
 ※ リルスの言葉によれば、「子供が出来なくて怒り狂ったズグトモーレに殺されそうになった私は、逆にズグトモーレを殺した」とのこと。
 
 800年ほど前、シャライズダンとネーラルという上級神を姦計にかけて(同士討ちさせて)滅ぼしたリルスは、2柱の権能である“嘘”と“情報”とを受け継ぎ亜神へと昇神した。

 リルスには、ダンとの忘れ形見である子供を再誕させるという宿願があった。
 宇宙船の事故当時も生まれていなかったために魂が存在しない二人の子供を再誕させるためには、特定の条件を整える必要があった。
 それは、ダンと霊的に接続した転生者の男性と、リルスと霊的に接続した転生者の女性とが交わることである。(←違うかもしれない)
 リルスの後見神である運命神イステュラスの好みではなかったが、リルスは偶然に頼らず、”嘘”と”情報”を駆使して二人を引き合わせることとした。

 22年前、ライル王国にミヅチことチズマグロルが転生した際、リルスはミヅチにレポートの魔術を行使して、日本での記憶を全て吸い出した。
 ミヅチこと椎名順子が思いを寄せる川崎武雄の存在を覚知したリルスは、試行錯誤の末、アレイン・グリードこと川崎武雄にレポートを行使することに成功した。
 川崎が、妻である美紀の手前、椎名順子の気持ちを知りつつも応えなかったことを知ったリルスは、自らの容姿を川崎の記憶にある美紀に擬態して接触の機会を待った。
 思惑どおり二人は結ばれ、儀式に必要な翼竜の毒腺・真祖吸血鬼の瞳・竜の心臓も手に入った。(←このために、ミヅチの兄に病を課した)
 後は、星辰の廻りが整う時期に儀式を行い、生誕を司る上級神バスカーヴに贄を捧げて交わるのみ。

 リルスはパンデモニウムからオース世界を見つめつつ、虎視眈々と機会を窺っている。