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「暑い……」

 正午、照りつける日差しの中、瑠璃色のローブを身にまとった人物は、思わず音をあげていた。

 ここ、陽光町《ようこうちょう》は、この国で最も日照時間が長いことからその名前がついたとされている。強い日差しによる熱中症でダウンしてしまう人も少なくはない。それはかの少女も決して例外ではなかった。

「どこかに水浴びでもできる場所はないわけ? あ、あれは……!?」

 瑠璃色のローブをまとった人物の眼に飛び込んできたのは、プールであった。その人物はその場で瑠璃色のローブをバサリと脱ぎ捨て、さらには上着とスカートすらも一心不乱に脱ぎ去った。

 今、この金髪のサイドテールの少女が身につけているのは、上下ともに黒色の下着のみである。

「いやっふぅ〜〜〜〜!!」

 金髪の少女は勢いよくプールへと飛び込んだ。プールに浮かべられた球体を掻き分けながら、実に気持ちよさそうに泳いでいる。

「夏! 夏といえば、プールで決まりよね!」

 少女の意識は、既に昇天しかかっていた。このうだるような暑さの中、光を吸収しやすい黒色に近い羽織ものを着て、何時間もだだっ広い公園を歩き回っていたからだ。

 だが、そんな暑さも一瞬で吹き飛ばされた。なぜならそう、夏に、プール、だからだ。

「ああ、なんて気持ちいいのかしら、この解放感。……だいたいあんな趣味の悪いローブなんて、最初から着てやることなかったんだわ!」

 若干の不満を口にしながらも、少女はフニャリと満面の笑みを浮かべていた。なぜならそう、夏に、プール、だからだ。

「ママー、あの人下着で『ボールプール』で遊んでるー」

「めっ、見ちゃいけません」

 偶然通りすがった親子は、金髪の少女にありのままの現実を突きつけた。けれども彼女は気にしない。なぜならそう、夏に……

「っっっ〜〜〜!! 気にするわよっ!」

 パシンッ。虚空にビンタの音だけが響き渡った。金髪の少女の呼吸はぜぇぜぇと荒れている。そして顔は真っ赤になっている。おそらくこの暑さのせいだろう。

「恥ずかしさのせいよっ!!」

 少女はボールプールから出ると、先ほどまで着ていた上着を羽織り、スカートを履いた。しかし、さすがにローブまでは着なかった。

「あーあ、たしかに、この暑さのせいだわ。室内プールにはハッピーがどうとか言われて入れてもらえなかったし、ほんと最悪」

 金髪の少女は着衣を整えて、再び公園の探索を再開した。少女は、アスレチックエリアを抜けて、のどかな公園エリアへと差し掛かった。


情景描写書けないんじゃなくてオチのためにあえて書いてないんだろ。早漏れ糞野郎かよ