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ナツキは男たちの密集に突入。
一人の腹部を強打。崩れ落ちる。同じ刹那、死角から、剣を振り下ろされる剣。
軌跡の先は頭部だ。
「死ねやァッ!!」

 青年はそれをかわさずに、見据える。
 次の刹那、その掌は刀身を握り込んでいた。それが、ごく自然な振る舞いであるかのように。
 《障壁》等の防御魔術の発動形跡は無い。
 受け止められた男の顔に驚愕が表れた時には、男は倒れていた。
 青年が顎を砕いたのだ。
 砕きざま、男から剣を奪う。
 
 青年は剣を振りかぶった。
 投げる。
 
 その剣は空間を一直線に裂き、別の男の喉に突き刺さった。
 男は詠唱をしていた。
 刀身に視線を下ろし、力なく崩れる。
 
 5人死んだ。

 その事実に、、男たちの足が後ろへと下がる。
 
「奴は《強化》しか使ってねえだろうがッ!! 怯まずに突っ込め!!」
叫んだのはリーダーだ。巨体の底から声を張り上げる。
青年が《強化》の魔術しか使用していないと見抜いたのだ。
使用術式は正解だが、ナツキのそれは質が違う。
剛力、堅強。大人と子供だ。

2人の男が勇気を得た。慎重に武器を携え、迫りる。
片や短槍で抉り、片やナイフで喉を裂こうとしてくる。
腹部にめがけた短槍の一突きに、青年は身を捻る。
槍は彼の服を軽くかすめる。
青年は気を吐いた。躱した勢いで回し蹴りだ。側頭部に決まった。
槍の男は、呻く事もなく、絶命する。
が、蹴りの隙に乗じて、短剣の男が懐に潜り込んだ。斬り上げ。
風の属性の術式が刻まれたナイフの微かな光は、ありえない速度で空間を削る。
その先は、露な首だ。
「貰ったぜッ!!」
 男の口元が歪んだ。勝利の確信。
 ナツキの腕は、さらに素早く動いた。手首を捕らえ、そのまま握りつぶす。

「ぎ、ああああァァァアアアアアアアッッ!!!!」

 鈍い音が響く。砕ける手首の骨。
 短剣使いは、恐怖に口元を引きつらせ、叫び続ける。

 男の手からナイフが放れた。ナツキはそれをぱしっと取り、横一文字になぐ。
 声帯が切り裂かれ、血が勢い良く飛び散る。
 ナツキは後方へと下がった。返り血を浴びないためだ。得物に付着した血を払う。
 ベルトに収めた。良い収穫だ。

 それから彼は、リーダーの大男へと視線を向けた。