0426この名無しがすごい! (ワッチョイ fb9d-EN9T)
2018/01/05(金) 00:22:34.21ID:DD2SfuUI0今書いてるんですがどうでしょうかこれ↓
なぜこんな目に遭わないといけないのか。
問いかけた答えが返ってくる事はなかった。
目の前では崩落した小屋の梁が屋根の間を貫いて突き出し、空に向けられていた。その間を縫って真っ赤な炎が溢れ返っていた。周りには沢山の人々――このラナ村の村人たちの遺骸が横たわっていた。皆、その胸には刃の傷が開かれ、血が溢れるように流れていた。
その小屋が私の暮らす――暮らしていた家だった。
頭の中が高揚してくると、自然と何も考えられなくなる。
まさに今の私がそうだった。
――サラ、行ってらっしゃい。
ほんの一時間前に、そう言って私を送り出してくれた母親。
今はその姿すら見えない。崩れた屋根の下にいるのだろうか。分からない。
こういう時は、涙を流しながら、真っ先に駆け寄りたくなるものだと思っていた。
でも、実際はできなかった。足が凍ったように強張って動かない。小屋の方に歩き出すことが怖かった。
村を囲う鬱蒼とした森の奥に,馬のいななきの声がした。
盗賊だ。約束通り奴らがやってきたのだ。
驚きの後にやってきた感情は一つ。
脅えだ。
盗賊に対する恐怖が私の全身を震わせた。もう周りに人影はいなかったが、いつ自分が襲われるのかも分からない状態。
動けないまま徒に時間は過ぎていく。
母親に声を掛けようと思ったが、口の中が乾いてそれも叶わない。
「サラ」
後ろから抱き締められた。胸まで押し潰されるように。強く。
ヴァイスだった。
私は何も答えられなかった。
「行くな、サラ」
「……」
もちろん、慰めてくれるものだと思っていたのに。
「しょうがない。仕方がないんだ。サラ。それが『楔の村』の宿命なんだ」
とても静かな声だった。でも、ヴァイスの声は震えていなかった。泣きはしていないようだった。
「……なんで」
やっと言葉に出来たのはそれだけだ。
私は前に進もうとした。
途端に両目の前に掌が覆い被さってきた。
「見ちゃだめだ。見ちゃいけない」
その繰り返し(トートロジー)の中に少しだけヴァイスの優しさを感じた。
でも、もう遅い。
私の意識は朦朧としていた。このまま心地良い闇の底へ落ちて行ってしまえば楽なのにとすら思った。