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「いや、本当。お前等仲がいいな」

 まさに喧嘩をおっぱじめようとしていたのに、何故、そんな感想になるのか。首を傾げるユエと香織に、ハジメは彼女達の手元を指差しながら言う。

「倒れ込んでいるときは、二人とも絶対に離すもんかって感じで抱き締め合ってたし。ほれ、今も、手を握り合って離そうともしない」
「……ん?」
「え?」

 ハジメの指摘を受けて、ユエと香織は自分達の手元を見やる。確かに、がっちりと握り合っていた。それも俗に言う恋人繋ぎのように。

 いざというときは意識するより早く互いを庇い合い、戦闘となれば阿吽の呼吸を発揮し、喧嘩していても互いに寄り添っているのが当たり前。

 これを仲良しと言わずしてなんというのか。一部の人達からすれば、既に二人の後ろには百合の花が咲き乱れていることだろう。

 不本意ッ! と言いたげに、慌てて互いに手を放した二人だが、文句と弁解を口にする前に、二人して後方へと強い力で引き寄せられた。同時に、顔面が凄まじく柔らかい場所へもふっと埋もれる。

「香織さん、言っておきますが、ユエさんは私のユエさんですからね。一番の親友は私なので! そこんとこ、よ・ろ・し・くぅ! ですぅ!!」
「ユエ。あんまり私の香織にちょっかいをかけないで。香織の一番の親友は私だから。そこんとこ、よ・ろ・し・く!」

 豊かな二人の胸に顔を埋められてあっぷあっぷしているユエと香織を間に、シアと雫がむすっとした表情で睨み合った。互いに、互いの親友を取られたようでちょびっと嫉妬したらしい。

「のぅ、ご主人様よ。いつもながら、妾、結構な疎外感を感じておるんじゃが、どうしたらいい?」
「……踏んでやろうか?」
「!? このご主人様めっ。愛しておるぞ」