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皆さん色々な意味でありがとうございます。お礼に即興。

額縁の中では桜が吹雪いている。中央には彼女がショートカットの前髪とスカート、セイラー服のリボンを風に
揺らしながら、こちらに思いっきりピースサインをしている。
彼女はわたしの8年先に生まれた姉の優子だ。笑顔がこれでもかってくらい輝いている。元々笑顔が
映える美少女なのだ。

この桜の写真は彼女の合格発表の時の物だ。東北大学医学部に合格した彼女は、才媛であるのみならず、
スポーツも得意だった。小柄だけど大きな相手を
投げ飛ばすのが好きな彼女は、合宿で訪れた先の仙台で大規模な災害に巻き込まれて、
7年前に死亡した。
彼女は死ぬなんて全然考えていなかったんだろうなあ、とわたしは思う。だって、桜の合格写真
のみならず、遺していったたくさんの写真の中で……。
笑顔が輝いているからだ。それは目を閉じて、いつまでも消えない残像みたいに。

同じ姉妹でどうしてこう違うのかな、なんて思いながら、この7年間を生きてきた。わたしの顔は
10人並み。告白だってされた事はない。
チョコを作ってもちゃんと受け取ってもらえたのは一回だけだ。何より頭の出来が違う。スポーツだって、
どんくさい。

でも、だからこそ。わたしはこの7年間。桜の中の姉を目指した。
今日、通知が届いた。合格発表は、びびりのわたしは怖くていけなかった。
恐る恐る、封を開く。『FOR YOU』と書いてある。あなたのために。
迷った末に思い切って、封を開く。目に飛び込んできた文言は−。

東北大学医学部、合格。

わたしは小さく叫んで、額縁の中の姉の前に行き、通知書を広げた。
それから、『わたしも』思いっきりピースサインを作った。

7年前に色んな大切な物が、散るみたいに取りさらわれてしまった。
けど、今この瞬間。
わたしは姉と一緒に、ピースサインをしている。