0458相模の国の人
2018/02/20(火) 15:39:13.09ID:UKChshRO「ピース! 吉田クン、元気?」
一人の美少女が右手でVサインを出し、笑みを浮かべながら、光太郎に声を掛けて来た。
英字新聞で読んだ記事に載っていたウィンストンチャーチルのVサインを思い出す。
「山本さん、どうも……」
光太郎は声が上ずっている。
「隣の方は吉田クンのお爺様かしら?」
「うん、そうだよ」
光太郎は明らかに緊張している。
「お初にお目に掛かります。私はクラスメイトの山本明莉と申します」
と言うと礼儀正しく頭を下げて挨拶をした。
できたお嬢様だと痛く感心をした。
背は高く、顔は彫りが深い。
何処かの国の血が入っているのだろうか。
「光太郎は私の曾孫当たります。申し遅れました、私は吉田十軒と申します」
私はソフト帽を脱いで挨拶をした。
「素敵なお爺様でいらっしゃいますね。吉田君はクラスの人気者なんですよ、いつもひょうきんなことを言って、みんなを笑わせてくれるんです」
そう光太郎を良く言ってくれる、このお嬢さんの笑顔は、原節子を彷彿とさせる爽やかさがある。
「そうですか。ところでその格好で寒くないのですか」
セーラー服の上にオーバーを羽織りマフラーを首に巻いているが、下は酷く短いスカァトを穿いている。
「大丈夫です! 昔から身体は丈夫ですから、子供は風の子と言いますしね」
「そうかね。では、お気をつけて」
「はい、有難うございます! 吉田クン、またね!」
彼女は手を振って去っていった。
私は光太郎の顔を見ると、両頬が朱に染まっている。
それを見た瞬間私は、光太郎が、あのお嬢さんに恋心を抱いているのに気づいた。
だが、頑張れよと言って、励ますようなことはしない。
そんなことを言ってしまえば、光太郎は精神的に参ってしまうだろう。
嘗て、学生時代の私がそうであったように。