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ワイが文章をちょっと詳しく評価する!【84】
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0001ぷっぎゃああああっす!
垢版 |
2018/02/10(土) 20:56:33.98ID:cZ2+QTng
オリジナルの文章を随時募集中!

点数の意味
10点〜39点 日本語に難がある!
40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
満点は創作者が思い描く美しい夢!

評価依頼の文章はスレッドに直接、書き込んでもよい!
抜粋の文章は単体で意味のわかるものが望ましい!
長い文章の場合は読み易さの観点から三レスを上限とする!
それ以上の長文は別サイトのURLで受け付けている!

ここまでの最高得点は76点!(`・ω・´)
0056この名無しがすごい!
垢版 |
2018/02/13(火) 00:33:52.78ID:pyfvwI5G
 休日のことであった。俺は漫然と畳の上に大の字で寝転がり、煤汚れた天井の木目を見るともなしに見ている。
 俺が故郷を離れて、東京の大学に進学したのがもう何年も前のことだ。大学を卒業してからも、故郷に帰ることなくこちらで職に就いた。
 職に就いた初めの頃は、新生活というものに微かな期待を募らせて……いいや、それを言うなら、初めて東京に出てきた時には大いに期待を募らせたものだったが……。
 これは何とも思慮の足りない想像であった。何の根拠もなく、上京さえすれば明るい未来が開ける、そんな盲信を抱いていたのだ。
 そして一度当てが外れたのにもかかわらず、今一度僅かばかりの期待を寄せたとあっては、愚か者の誹りは免れないであろう。
 今だからこそ分かることだが、これは田舎者特有の、盲目的な都会への憧れから来る愚かなる思い違いというものであった。

 現実の東京は、なるほど栄えている。人も多い。先進的な流行にも溢れていよう。だが、それだけであった。
 生きていく上で気鬱となるようなあれこれがあるのは変わらない。むしろ、人が多い分人間関係が煩雑で、気鬱の原因が増えるきらいすらあった。
 それに気付いてからは、なんとも無気力に陥ってしまい、職場と下宿先を往復する毎日で、偶の休日もこうして無為に過ごしている。

 はあ、重々しい溜息を吐いた。いい加減天井の木目を見るのも飽いたので、俺はむくりと起き上った。
 ぐるりと視線を巡らせる。四畳半の狭苦しい部屋なので、その全容を把握するのは容易い。
 三つ折りに畳んだ布団と箪笥が部屋の隅に追いやられるように鎮座している。その真逆の隅っこの壁には、折りたたまれたテーブルが立てかけられていた。部屋のそこかしこに、文庫本が転がっている。

 俺の安月給では、ボロアパートの一室を借りるのが精一杯で、住み心地が良いとは言い難い。年季の入ったボロアパートなので、まるで明治か、大正だかの書生のような有様だ。

「ん? 何だ、これは……」

 文庫本に紛れて、一枚見覚えのない紙が落ちている。指先で摘まみ上げて、その紙面に書かれた文字に目を走らせる。
 ――『ワレワレ ハ ウチュウジン ダ』
 仮名文字でたった一行だけ書かれた文章。それは何とも荒唐無稽なものであった。
 どこでどう紛れ込んだものやら。しかし、何処の馬鹿がこんな走り書きをしたのか?
 そう思いながらも、手持ち無沙汰からか、俺はボールペンを手に取ると、新たな文字を書き加える。
 ――『お前はどこの星の者だ』

「はは、何書いてんだ、かぁ!?」

 目を見張る。如何なる不思議か、俺が書き加えた一文の下に、じわぁっと、新たなる一文が浮かび上がってきたからだ。
 ――『テシガワラ セイ ノ モノダ』
 テシガワラ星……? 聞いたこともない。いや、それよりもどうして独りでに文字が浮かび上がったのか? ……何かのドッキリか?
 辺りを見回すが、手に持つ紙以外に不自然なものはない。というより、誰が俺のような人間を相手に、こんな手の込んだドッキリを仕掛けるというのか?
 俺は自分が超常的な何かに見舞われていることを認めずにはいられなかった。
 ゴクリと喉を鳴らすと、筆談を重ねていった。

 筆談の内容をまとめるとこうなる。
 テシガワラ星で十年前に死んだと思われていた反乱分子が実は生きていた。
 その反乱者は、この地球に逃れ、地球人の振りをして暮らしている。
 捕殺の為に追いかけようにも、地球の環境に適応できるよう体をチューニングするまでに最低4年はかかる。
 再び見失う前に捕殺したいが、4年の間に別の星に移るかもしれない。
 そこで、現地住民の協力を得ることにした。
 協力してくれるなら、テシガワラ星の超技術で、何か一つ願いを叶えると。

 俺は思った。テシガワラ星人の依頼を達成し、願いを叶えてもらえれば、このクソみたいな人生も変わるのではないか、と。
0057この名無しがすごい!
垢版 |
2018/02/13(火) 00:40:33.35ID:pyfvwI5G
「……しかし、探すためのヒントが小説だと?」

 何でも、この地球に隠れ住むテシガワラ星人は、反乱分子としての顔とは別に、小説家としての側面も持っていたとのこと。
 だから、この星でも必ず執筆活動をしていると思われる、らしい。
「だがなあ、小説なんてどれだけあると……」
 カタカタと検索エンジンに文字を打ち込んでいく。
 テシガワラ星人が言うには、件の宇宙人は自分の作品の主人公に、テシガワラ ツタコとやたら付けていたらしい。その筋から探してくれとのことだが……。

「こんなんで本当に見つかるわけ……見つかったよ」
 勅使河原蔦子を冠する作品名がゴロゴロとヒットしてしまった。マジか。
「ま、まあ、手掛かりは見つかった、な」

 俺はそれからというもの、この勅使河原蔦子の作者を執拗に追いかけた。
 すると、彼がワイスレというスレッドに入り浸っていると掴むことができた。そこで、俺もそこに書き込んで勅使河原作者と交流を重ねていった。そうして……。

 俺は北海道にいた。
 すっかり打ち解けた彼から、彼が北海道在住だと情報を聞き出した俺は、札幌出張が決まったのでオフ会をしないかと誘い出したのだ。
 俺は待ち合わせ場所で、灰色の空を見上げた。白い雪がちらちらと舞っている。

「あの……リーマンさんですか?」

 鈴を転がしたような声が聞こえた。振り返る。そこには黒髪の乙女、そう表現したくなるような美少女が立っていた。何と学生服を身に纏っている。こんな寒いのに、生足をさらけ出していた。

「てっしー、か? 女? いや……そもそも地球人に化けているんだから、男も女もないか」

 俺の言葉に、勅使河原作者は明らかに狼狽した表情になる。

「悪いな、てっしー、お前を捕まえさせてもらう」
「リーマンさん、まさかあなたが、連中の差し金だったなんて……」
 彼女の声が悲壮に震える。罪悪感が込み上げてきたが、それを無理やり押し殺す。
「すまんな」
「……リーマンさん、私を捕まえると言いますが、それは無理です。地球人では、テシガワラ星人の超技術には対抗できない」
「らしいな。でも、テシガワラ星人たちは、君の弱点を教えてくれたよ」
「弱点?」
「ああ。それは、作家としての豆腐メンタルだ」
「あっ……」
「なあ、てっしー、お前の小説は……!」
 
 ――クソつまんねえ、そういうだけで全てが終わる。
 だが、その言葉を吐く前に、これまで読んできた彼女の小説が思い起こされる。
 なろうで連載する小説、ワイスレ杯で受賞した作品。独自性の高い即興文。勅使河原蔦子作品群。更には、彼女との交流のあれこれを。

「ッ! お前の小説はクソおもしれえよ!!」
「なっ、リーマンさん、あなた……」
 唖然とした表情でこちらを見詰める少女。
「早く行けよ、俺の気が変わる前に。そんで地球から逃げろ。どっか遠くの星に。……連中は今も君を追いかけている」
「リーマンさん、その、何て言えば……」
「早く行けって!!」
 勅使河原作者は、びくりと弾かれたように身を跳び上がらせると、一歩二歩と、俺から離れていく。だが、その歩みは遅い。何度もこちらを窺うように振り返っている。
 彼女と視線が合わないように、俺は天を仰ぐ。
 ……どれほどそうしていただろうか。きっと数分間経ったろう。もう彼女は目の見えない場所まで行ったに違いない。
「ん?」
 ちらちらと舞い散る雪に混じって、ひらひらと一枚の紙片が舞い落ちてくる。
 俺はそれを右手で掴む。果たしてその紙面には――『裏切ったな』と、恨みがましい文字が躍っていた。
「はっ、ざまあみろ」
 俺はびりびりと、その紙片を破り捨てると、駅の方へと足を進めていった。
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