地平線まで続く、一面の菜の花畑。
俺はその真っ只中に佇み、目の前に広がる光景を呆然と見つめた。
一人……、二人……、三人……。無数に転がる血まみれの死体。
青い空と、菜の花の黄色。そしてそこに流れる真っ赤な血の跡。鮮やかな原色の煌めきが一枚の絵のようなコントラストを描いていた。
俺の体も返り血を浴びてじっとりと濡れている。だが漆黒のスーツは、闇に染まった俺の心を写すかのように、凄惨な色合いを包み隠していた。
「勝ったぞ!」
手にした小銃を振り上げ、雲一つない空に向かって叫ぶ。
「俺の勝ちだ! さあ、賞金は俺のものだ!」 
俺の周りに人影は見当たらない。
だが奴らはどこかからか見ている。俺達が殺し合う様を、涎を垂らしながら眺めているに違いないのだ。
「うおおおおっ! おおおおおおおっ!!」
叫ぶ! 叫ぶ! 叫ぶ!
俺は生き残った。事業の失敗で負った莫大な借金もこれでチャラ。そして更に一生遊んで暮らせる程の賞金も手に入れた。
「おめでとう。よく勝ち残ったね」
いつの間に現れたのか、気が付くと目の前で一人の男がパチパチと拍手をしていた。
「さあ、賞金だよ」
男が右手を差し伸べる。
俺も釣られたように手を伸ばすと、男は俺の掌に何かを乗せた。
「えっ?」
それは一枚の銅貨だった。
男がにこりと笑う。そして左手で銃を抜き放ち、俺を撃った。
一生遊んで暮らせる金。
俺の残りの一生は、銅貨一枚すら使い切れないほど短かったのだ。