今からちょうど一月前、私は『一人しゃぶしゃぶ食べ放題』に挑戦した。入店するときに少し緊張してしまったが、
入ってしまえばこっちのもの。黒毛和牛とイベリコ豚は油が程よく洗い流されるのでツルンと喉を通っていく。
気が付けば10皿以上食べていた。
 二週間前は、秋葉原の居酒屋へ。30分400円で飲み放題が出来るので最近よく通っている。
アツアツの鶏のから揚げとメンチカツを頼んで、脂っこくなった口の中へジョッキのビールを流し込む。
予算も考えて1時間という短い時間であったが、実に楽しかった。
 先週の昼は、ブロンコビリーでステーキを食した。最近便の出が悪いから、サラダバーで野菜をたくさん食べて食物繊維を
摂ろうと思ったからだ。1300円のランチステーキは油を跳ね飛ばす熱いうちこそ柔らかく口の中へ溶けていったが、
冷めてしまうと何だがぐにょぐにょしたゴムのようになっていつまでも口に残った。
サラダもドレッシングをかけすぎたせいでくどい味になってしまった。
 親元を離れてからと言うもの、私の食生活は乱れに乱れた。実家暮らしの時にあまり外食をしなかった反動もあるのだろう、
連日連夜、新たなお店を開拓してはいろんな味に舌鼓を打った。

 しかしついにその報いを受けることになってしまった。
 昨日、突然お腹が痛くなった。あまりにいたかったで救急車を呼んだところ、栄養失調と食べ過ぎであると診断された。
医者に家で安静にしていろと言われたが、自分は一人暮らしであると言うと実家に電話を入れられた。
すぐに母が飛んできて、僕は布団の中でこっぴどく説教を受ける事になってしまった。

 今、僕は下宿にいる。母がおかゆを作ってくれたので少しづつ口に運んでいる。ほのかに塩の味がする他は味気が無い。
まだ昨日までの食物が腹の中に詰まっているせいで苦しく匙を運ぶのもしんどい有様である。
それ文句を言うと、母は黙って食えと一喝した。ひどい話だと僕は思った。
しかし僕は黙って口に運んだ。
一人暮らししてから食べた中で、これが一番優しい味がしたからだ。