俺は悩んでいた。
つい先ほど帯留めの現金百万円が落ちているのを発見した。
辺りに人の気配はない。時刻は深夜二時。
ちなみに先月会社をクビになったばかりだ。
さらに、退職金をパチンコで使い果たした。
アパートは追い出されたし泊めてくれる奴もいない。
おまけと言っちゃなんだが腹ペコだ。
つまり金に困っている。
すぐにでも手にとって懐に仕舞いたいところだ。
だが俺は悩んでいた。
腕を組んで渋い顔で唸る。
しばらく悩んだ挙句、俺は何もせずその場を立ち去った。
金は確かに惜しい。
だが、やめておくべきだと思った。
そばに血を流して倒れている男も落ちていたからだ。
遺失物等横領罪ならまだしも、殺人の罪をなすりつけられるのは御免だ。