0132この名無しがすごい!
2018/04/21(土) 14:37:23.94ID:QOHyY7s1【アルレリナ戦記】(1/3)
ここ、アルセリナ大陸では、魔族の侵攻が本格化してから数年が経ち、各地では小競り合いの様な戦争が今も続いていた。
一進一退の長き戦争で、各国の国力は次第に低下しつつあり、人類側も戦争を終結させる為、様々な方策を練ってはいるが、それのどれも決定打にはなっていなかった。
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メイズ・コルセイアは、行きつけのバーのカウンターでギムレットをチビチビと口にしながら、ブチブチとくだを巻いている同僚に対し溜息を吐いた。
「気持ちは分かるけど、もう、飲むのは控えなさいよ……」
「あ〜? らいひょ〜!! わきゃうあら、ほまへあはいお〜!!」
そう言ってレモンハートをお代わりする、呂律も回っていない酔っ払いこそ、アルセリナ士官学校の導教員であるラナイヤ・シズンだった。
(……また説得に失敗したのね)
普段は柳眉の整った美貌を誇り、男子士官候補生の憧れの的であるラナイヤの、ちょっと生徒には見せられない醜態具合に、メイズは彼女から目線を外すとギムレットを飲み干した。
この日、ラナイヤはある人物を訊ねた帰りだった。メイズとも旧知であり、先の戦場での負傷により軍から離れた男である。
この様子を見れば、話し合いは上手くいかなかったのだろう事は想像に難くない。
「う〜……あんれ、わきゃっへくえあいおよぉ……」
「うんうん、セウス君は分かって無いよね」
バタンッとバーテーブルに突っ伏し、そのまま寝息を立てるラナイヤを見ながら、メイズの脳裏に一人の男の姿が思い浮かぶ。
セウス・アルティアナ……彼は優秀な男だった。
勇猛果敢と言うタイプでは無かったが、冷静で知略に優れていた。
ラナイヤやメイズ、そしてセウスの居た中隊は、指揮官のミスにより魔族の挟撃を受けた。撤退する敵に乗せられ、突っ込み過ぎたのが原因である。
その時もセウスは、いち早く違和感に気付き進言をしたのだが、しかしそれは指揮官に受け入れられる事は無かった。
孤立する味方。支離滅裂な命令を発し、挙句負傷して意識を失う指揮官。ラナイヤとメイズでさえ、全滅が頭を過った。
「安心しろ、この作戦を十全に全うできれば、僕達は勝てる」
誰もが絶望に染まった中、唯一人勝利を見据えていたのがセウスだった。