使用お題:『忍者』『博打』『エイプリルフール』『巨大または極小』『サービス』

【四月の愚者】(1/2)


 四月の一日、俗に言うエイプリルフール。
 私は早朝から隣に住む幼馴染の部屋に、あたかも忍者の様に音もたてずに上がり込みます。
 いつも「勝手に入って来ないでよ」と言う割には、窓に鍵が掛かっていた事などありません。

 隣が私の部屋だと言う事で油断しているのでしょうか? その信頼がこそばゆくもありますが、ニヤケている場合ではありません。

 ベッドを覗き込むと、まだあどけなさの残る顔が、スースーと寝息をたてています。

「睫毛が長いですね……」

 サービスショットです。愛らしい寝顔に、私は「ほぅ」とため息を吐きました。

 今日、私はある決意を胸にここを訪れました。巨大な不安と、極々小さな期待を胸に……

 だって、これ以上堪え忍ぶなんて、もう、こらえられそうにありませんから……

 確かにこれは大博打です。
 ですが今日、この時だからこそ許されるかもしれない……そんなささやかな打算も持っています。
 我ながら浅ましいとは思いますが、しかし、保険でも掛けていなければ、こんな博打にうって出ようなんて思わなかったでしょう。

「ん、うぅん?」

 部屋の主が目を覚まします。私の胸が早鐘を打ちます。

「おはよう! 歩夢!」
「あ、美希ちゃん。おは〜………………何でいるの?」

 寝癖でとっ散らかった頭で、歩夢がコテンと首を傾げます。
 そんな小動物の様な仕草も、私の心を捕らえて離しません。
 物心ついた時からこんな事が続けば、理性も崩壊しようと言うものです。
 ですからこの、これから私が行う歩夢を傷付けるかもしれない行為は、ある意味、歩夢のせいでもあります。
 私は疑問に答えず呼吸を整えました。