0014この名無しがすごい!
2018/04/04(水) 19:27:16.94ID:4TznPhhp【四月の愚者】(1/2)
四月の一日、俗に言うエイプリルフール。
私は早朝から隣に住む幼馴染の部屋に、あたかも忍者の様に音もたてずに上がり込みます。
いつも「勝手に入って来ないでよ」と言う割には、窓に鍵が掛かっていた事などありません。
隣が私の部屋だと言う事で油断しているのでしょうか? その信頼がこそばゆくもありますが、ニヤケている場合ではありません。
ベッドを覗き込むと、まだあどけなさの残る顔が、スースーと寝息をたてています。
「睫毛が長いですね……」
サービスショットです。愛らしい寝顔に、私は「ほぅ」とため息を吐きました。
今日、私はある決意を胸にここを訪れました。巨大な不安と、極々小さな期待を胸に……
だって、これ以上堪え忍ぶなんて、もう、こらえられそうにありませんから……
確かにこれは大博打です。
ですが今日、この時だからこそ許されるかもしれない……そんなささやかな打算も持っています。
我ながら浅ましいとは思いますが、しかし、保険でも掛けていなければ、こんな博打にうって出ようなんて思わなかったでしょう。
「ん、うぅん?」
部屋の主が目を覚まします。私の胸が早鐘を打ちます。
「おはよう! 歩夢!」
「あ、美希ちゃん。おは〜………………何でいるの?」
寝癖でとっ散らかった頭で、歩夢がコテンと首を傾げます。
そんな小動物の様な仕草も、私の心を捕らえて離しません。
物心ついた時からこんな事が続けば、理性も崩壊しようと言うものです。
ですからこの、これから私が行う歩夢を傷付けるかもしれない行為は、ある意味、歩夢のせいでもあります。
私は疑問に答えず呼吸を整えました。