久々にぱって思いついたお話
前のお話を覚えてる人、いるかなぁ

【爆発! 可哀想な者倶楽部】(1/2)
「トコロテン後輩、トコロテン後輩」
 春から夏へと徐々に気候が移り変わりつつある、何気ない一日。徐々に女子の制服から下着が透け始めるのを心待ちにするある日、チカン先輩──智寛(ともひろ)という名前であるが──は僕にこう切り出した。
 僕こと中川心太(しんた)、もといトコロテン後輩は、窓際からぼんやりとグラウンドを眺めていた視線を、そっと先輩に戻す。
「何ですか」
「僕はね、体育祭が憎いんだ。なにが悲しくて身体なんかを動かさないといけないのか、僕にはとても理解できない」
「はぁ、まあ、暑いですよね」
 秋に体育祭をする高校よりは恵まれているような気もするが、チカン先輩に言っても栓のないことである。
「だが、僕程度の人間が──それこそ生徒会長ほどの人間であれば話は別なんだろうけど、たかだか会計委員が中止にしようって言ったってそうはいかない」
「生徒会長でも無理だと思いますけど」
 僕の突っ込みは尽く無視され、ほぼ一方的にチカン先輩のターンが続く。
「でさぁ、僕は見つけてしまったんだよ。体育祭という呪いのような行事を中止する、画期的な方法を!」
「……どうせくだらない話なんでしょうけど、一応聞いてあげますよ」
 冷ややかな目を送る僕に、チカン先輩は気付きもしない。
「ほら、見て! この記事だよ」
 チカン先輩に差し出されたスマートフォンの画面を見ると、そこには「スマホ爆発! 原因はリチウムバッテリーか」という記事が表示されている。
「……何企んでるんすか」
 だんだん敬語が雑になる僕の対応を気にするでもなく、チカン先輩は続ける。
「このニュースのスマホ、僕のと同機種なんだよ! 小規模でも校内で爆発が起これば体育祭なんて中止になる……!」
「アホっすか」
 ここ「可哀想な者倶楽部」……通称カワクラが学内から馬鹿揃いという烙印を押される原因の一つは、間違いなく先輩にある。
 もう一つの原因、河合海月(みづき)ことクラゲ後輩のことをふと思い出したとき、足元に猫がすり寄って来た。
「にゃあ」
「あ、蒼(そう)ちゃんにご飯の時間。今日クラゲ後輩は来てないんですかねぇ」
 校内放送で、クラゲ後輩が猫をこっそりかくまっていたことをばらしてしまった事件──ここでは突っ込まないが──以来、カワクラの部室(という名の会計役員の部屋である)で飼うことは黙認されている。が、責任を持って飼うと宣言したクラゲ後輩の姿がない。