使用お題:『続編』『合体』『ロボ』

【懐古】


 男は半ば眺める様にその映画を見ていた。映画館の人はまばらで、特に興味も無いのか、映画などそっち退けでいちゃついているカップルもいる。
 男にした所でオールナイトの格安の料金でなければ足を運ばなかったかもしれない。

(知名度を考えれば、そんなもんかもな……)

 いちゃつくカップルに煩わしさを感じながらも、男はそんな風に思った。
 映画は続編だった。いや、これを続編と言って良いのかは分からない。30年も前に作られたTVアニメのシリーズ物の続編と言う触れ込みの映画だった。
 確か一作目が宇宙船から変形するロボットで、二作目は合体するロボットだったか。男が当時見ていたのはそこまでで、確か三作目もあったはずだ。
 当時は高級過ぎて、その玩具など買って貰えなかった記憶があった。

(今なら買える資金が有るんだけどなぁ)

 もし今、当時の自分に会ったのなら、果たして今の自分はそれを買い与えるのだろうか? そんな事を考え、男が小さく笑う。
 気が付けば、映画は既にエンディングに入っている。カップルもいつの間にか消えていた。
 勧善懲悪。チープで分かり易い。だが……

「昔は夢中で見れたんだがなぁ」

 そんな呟きが口から洩れる。
 男は、次第に明るくなる映画館で伸びを一つすると立ち上がり、そしてまだ暗い街へと帰って行った。