そして5作目

使用したお題:『忍者』『博打』『エイプリルフール』『巨大または極小』『サービス』

 王様は極東の国で、一日だけ嘘をついて良い日があるということを知りました。
 なので嘘をついてみました。

「この国には忍者がいるぞ」

 お付きの人が王様に尋ねました。

「忍者とは何ですか?」

 王様は得意げに答えます。

「忍者は、人々の中に隠れて悪いことをするんだ。誰にも見つかることなく、重要な秘密を調査したり、噂を流して人々を騙したり、人をこっそり暗殺したりするすごい人たちのことだ」
「おお、それは恐ろしい」

 お付きの人たちは驚き恐れました。王様は自分の嘘で騙されるみんなの顔を見て、満足げに頷きました。

 しかし、みんなは王様の嘘を本当のことだと信じてしまいました。
 そのせいで国中の人々が疑い合い、窓の外から家の中を見ている人や、噂好きでいろいろな話をする人や、刃物のような武器を持っている人を極端に怖がるようになりました。
 また自分の周りに忍者がいないか警戒するようになりました。窓から他人の家を覗き、あいつは忍者じゃないかと噂を流し、懐に刃物を隠し持つようになってしまいました。

 国中が大変なことになり、王様は慌てました。王様は大きな声でみんなに聞かせました。

「みんな、国の中に忍者がいるという話は嘘だ! 私は嘘をついただけなのだ!」

 しかし、その言葉を信じる人はいませんでした。

「いや、忍者はいるはずだ! 怪しい奴はたくさんいるぞ!!」
「王様が嘘をつくはずなんてない! お前、忍者の化けた偽物か!?」
「忍者を庇おうとするなんて、もしかして王様は忍者の仲間なんじゃないか?」

 こうして、王様は忍者だと疑われて牢獄に閉じ込められてしまいました。そして「まさかこんなことになるなんて」と後悔しながら死んでしまいました。
 みんな、王様のように大変な目に遭いたくなかったら、嘘なんてついたらいけませんよ。

 おしまい。


「…ふぅ、まさか当てずっぽうとはいえ、我々の存在に感づく者がいるとは……」
「だが、おかげで敵国を比較的簡単に内部崩壊させることができたぞ。単純な国力だけなら極大だからな、この国は」
「そうだな、情報操作は我々の専売特許。楽な仕事だったな。ところで、誰が王様にエイプリルフールのことを教えたんだ? それに忍者なんてマイナーな存在もなんで知ってたんだ?」
「わからないか?」
「……なるほどな。なかなか分の良い賭けだったな。で、王様が獄中死したのは?」
「サービスだ」