ちょっと連載の息抜きに。

使用したお題:『対決』『魔法』『芋焼酎』

【二人の魔法使い】

 ある場所にて二人の男が向かい合っている。幾度となく対決を続けてきた青髪と赤髪の二人の魔法使いの新たな闘いの幕が上がろうとしている。
 緊迫する二人の男同士の闘いは睨み合いが続き、中々始まらない。互いに攻め込む隙がないのである。緊迫感溢れるその状況に互いに冷や汗が出てきている。
 しかしいつまでもそのような状況は続かない。赤髪の男の目に僅かに汗が流れ落ちる。

「『アクアバレット』」

 そのほんの少しの隙を突いた青髪の男が手を振り上げると同時に数多の水弾を一瞬の内に展開される。だが、対峙する赤髪の男にも欠片も油断した様子は見られない。後手に回った事を冷静に受け入れ、それに対する最適な戦法を模索する。
 しかしそんな間など与えまいと青髪の男が手を振り下ろすと同時に数多の水弾が赤髪の男に襲いかかる。その水弾の威力は一発で普通の人ならばあっさりと貫通する致命の一撃。それが横殴りの豪雨のように襲いかかる。

「『炎纏』!」

 数多の水弾に対抗する為に赤髪の男は身に炎を纏う。その身に宿す炎は鉄をも溶かす業火であり、襲い来る水弾を即座に蒸発させる事で致命の水弾を防いでいく。
 互いに持つ実力は人の域を越え、そのどちらも致命の一撃となる。水弾が脅威でなくなった為、距離を詰め赤髪のの男は攻撃に転じようとするがそこで失策に気付く。
 赤髪の男にあの程度の水の魔法が通じない事など幾度となく戦ってきた青髪の男が知らない筈がない。それでもその攻撃を選んだのはその防御の後に起こる事である。大量の水が蒸発し、そしてそれが他の水弾によって冷やされればどうなるか。つまりは霧の発生である。

「ちっ! しくじったか!」
「らしくないな? 我慢しきれずに焦ったか?」
「そう思うなら譲りやがれ!」
「それだけはお断りだ」

 霧で姿を隠した青髪の男が赤髪の男の文句はばっさりと切り捨てる。そもそもそれが出来るのであればこんな対決などはしていない。

「『ダイヤモンドダスト』!」
「ちっ、今回は俺の負けかよ……」

 青髪の男が繰り出すのは氷属性最強の魔法。赤髪のの男にとっては何もない状況であれば切り抜けるのは容易いが、霧という条件下でこれを破るのはほぼ不可能に近い。禁忌を魔法を使えば不可能ではないが、流石にそれはやり過ぎである。
 赤髪のの男は死なない程度に威力を削ぐ程度に炎纏を使い、大人しく今回は負けを認めた。

 互いに生死を問わずに戦えばもっと壮絶な事になり、周囲にも甚大な被害が出るだろう。

「えーと、今回はあなたの勝ちですね」
「あぁ、毎月配達を済まないな」
「いえいえ、これが仕事ですので。こちらが今月分の『芋焼酎』になります」
「ちっ、これで来月まで俺は酒はお預けか……」

「これも酒の席の喧嘩で王都を半壊させた罰なんですから諦めて下さい。月一回の酒の差し入れがあるだけマシと思ってくださいよ!」

 赤髪の男と青髪の男は、揃って酒の飲み過ぎで喧嘩をし王都を半壊させた。だがどちらも救国の英雄であった為に1年の軟禁という非常に軽い罰で済んでいる。ただし毎月1回ある差し入れの酒を両者で分け合う事はなく、配達の者の立会の元で奪い合いをしているのである。
 先月は赤髪の男の勝ちであり、今月は青髪の男の勝ちであった。