>>351 使用したお題:『対決』『魔法』『芋焼酎』

【戦争は最大の利益を生む】

 基本的にこの戦場において、終始我が軍は優勢であった。

 まず兵站が開かれる段階で差があった。我らが軍は大量の水資源と豊富な食糧のおかげで軍備を最大限にまで拡張することができたのだ。
 また気候が我らを味方した。ちょうど暖かくてとても過ごしやすい20度前後の気温の中、我らは来るべき戦時に対して準備を整えることができたのだ。

 対して敵側は悲惨であった。なんと国民すべてに接収が行われたのだ。
 開戦に備えての徴収とはいえ、これはあまりに非道。戦列に加わるはずの兵士たちは身ぐるみを剥がされたも同然であったのだ。
 しかもそれだけではない。丸裸とされた彼らに過酷な労働を強いたのだ。汗水垂らして仕事をした彼らは、戦争が始まる前からクタクタに疲れ、身も心も緩く弱り切っていたといえよう。

 そんな状態で戦端が開かれれば、結果など推して知るべしである。
 心身ともに充実した状態で戦争へと向かう我が軍と、身を粉にして働いた敵軍では戦いになどならない。じわじわと、だが確実に彼らの戦力をそぎ落としていった。
 また神も我が軍の勝利を望んでいるのだろう。戦争が始まるや否や、気温がぐんぐんと上がり、熱気むしばむ猛暑となった。その気温30度、戦いの機運ができている我らはその熱に乗じて進軍を続け、体力が落ちている敵軍は一方的に我らに蝕まれていった。

 しかし、戦争の結果だけは予測通りとはならなかった。
 なんとかして我が軍の侵攻を阻み、2週間もの膠着状態を生み出した敵軍であったが、まさか最後にどんでん返しを用意しているとは思わなかった。
 いざや最後の攻勢、と思いいきり立った我らは突如戦域から弾かれてしまったのだ。ものすごい熱風と水蒸気の渦に巻き込まれ、我が軍は壊滅的な打撃を受けてしまった。

 もちろんこれは敵軍にも効果があった。彼らの血と汗と涙はまるで魔法のように上昇気流に巻かれ、どこかへと消えてしまったのだ。我らの屍だけを残して。
 そうして神に見捨てられた我々は、どちらも勝者を生むことなく、豚の餌になってしまったのだった……。

 こうして、我が軍「酵母菌」と敵軍「さつまいも」との戦争は無為に終わり、どこかへと消えていった血と汗と涙の結晶である「蒸留酒」は、神々の手に渡ったのである。

 後の歴史家が語る「芋焼酎の作り方戦争」である。