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使用お題:『雨』『悪魔』『ガソリンスタンド1』

【デビランドトゥギャザー】(1/2)


 ガソリンのメーターに目をやれば、エンプティ―ギリギリでメーターの針がダンスしていた。中川 翔は溜息交じりに紫煙を吐き出すと、街道沿いにガソリンスタンドを探す。
 アメリカの片田舎は、本当に街道以外の物が目に入らない。このままだと、車を押して進まなければならないだろう。
 翔は舌打ちをしたくなった。
 だが幸いにして、無人のガソリンスタンドを見つけ、車を滑り込ませる。
 休憩所と給油機しかない寂れたガソリンスタンドだった。

「……」
『結界を張られたなブラザー』

 翔は顰めっ面で煙草をもみ消した。

 命のやり取りは日常茶飯事だが、こうも一方的に狙われ続けるのは翔の主義に合わない。元凶でもあるコルトピースメーカーを腰に差すと車から降りる。

『さぁ、ご機嫌なダンスの始まりだ!!』
「黙れ」

 呪われた道具……そう呼ばれるものはいくらでもある。徳川家に仇を成す村正しかり、持ち主に不幸を呼ぶホープダイヤしかり。

 コルト・シングル・アクション・アーミー……悪魔に憑かれた呪われし銃。

 “平和の創り手”等と名付けられて居ながら、この銃程血を吸った拳銃は他に無いだろう。幾人もの命を啜り、足りなければ持ち主の命すら奪って来たそれは、いつしか、“悪魔憑きの妖銃”と言われ怖れられて来た。

 しかし、怖れは畏れへと変わり、その抗い難き魅力と共に信仰となる。

 翔は煙草を咥えるとガソリンスタンドの中央へと歩みを進めた。

 タ―――ンッ。

 乾いた音と共に、翔の上半身がグラリと揺れる。
 ドサリ……と灰色の人影が屋根から落ちた。

「まずは一人……」

 いつの間にか抜き撃ちの体勢に成っていた翔の口からそんな言葉が零れた。

 ターン! ターン! ターン!

 続けざまに銃声が響き、しかし翔はクルクルと踊る様に立ち位置を移動し、その度に銃跡がコンクリートの地面に穿たれる。

 一発一殺。

 攻撃位置を見定め、的確な反撃で確実に命を奪う。襲撃者達の動揺が、手に取る様に翔には読み取れた。

『ご機嫌んな御馳走だぁ!! もっと、もっと寄越せよぉ!!』
「黙れ」

 憮然としたまま、翔が弾を入れ替える。
 埒が明かないと思ったのか、チャンスだと思ったのか、襲撃者達が姿を現した。その全員が灰色の迷彩を施したマスクと上着、ズボンとブーツ姿で、手にはピースメーカーを握っていた。