使用お題:『雨』『女装』『同性愛』

【俺の親友】(1/3)
下駄箱まで近づくと、雨の音が一際大きく聞こえてくる。
同級生たちが傘を開いて友人たちと喋りながら帰宅していく。
俺はどうしようかと少し途方に暮れた。
「傘忘れちゃったの?」
後ろからハスキーボイスがする。
振り返ると、見た目は可憐な女子生徒がからかうように俺を見ている。
「お前は?」
「持ってきてるよん。一緒に帰ろっか」
そいつは俺と腕を組んで歩こうとした。俺も特に抵抗しない。
左手に開いた傘を持って、右手に俺を持って雨の中を歩く。
「まるで恋人同士だね?」
「そうかい」
歩く途中で、いくつかの生徒が俺たちのことを意味ありげに見る。おそらくこいつと同じクラスの人間だろう。俺はそいつらを無視した。
道路にたまった水たまりをトラックが勢いよく跳ね飛ばして去っていく。
俺はこいつを車道側にしたままにするべきか少し迷ったが、まあいいかと思い直した。
傘に二人は少し狭いらしく、俺とこいつの肩が少し濡れてしまう。
「君は昔っから天気予報を確認しないよね」
道中クスクスと笑いながら、こいつは俺をからかってくる。
「ガサツって言いたいんだろ」
「いやいや、そのおおらかさも君のいいところさ。それにこうして僕が傘を持ってくれば問題はないしね」
「お前にいつも借りるのは嫌だな」
「どうしてさ? 僕は君に頼られて嬉しいのにな」
俺に絡みつく腕の力が少し強くなる。