【クレインエフェクト】
ある寒い冬の日。雪の原に羽ばたく小さな翼を見た。近づいてみると、一羽の鶴が罠に足を捕られてもがいている。

「おお、おお、かわいそうに」

罠を外してやろうと手を伸ばすと、鶴は羽ばたき抗おうとする。けれどすぐに力なく伏せてしまう。

「食うたりはせんから、そんな目をするな、ちび助」

これでは餌も食えなかったろうによく生きていたものだ。いや、きっとこのめぐり合わせも運命なのだろう。この年になってようやく、鶴に恩返しができるとはな。



「帰ったぞ」
「まぁまぁ、今度は何を拾ってきたのですか……」

さすがに鶴を抱えて帰るとは思わなかったのか、ひどく驚いた顔が出迎えてくれた。これはキツネの子を拾ってきたとき以来だな。

「……犬が続いていましたから、よもや三匹目はと予感がありましたが」
「怪我をしとるんだ、手当をしてやりたい。あぁ、三郎と四郎は近づけんでくれよ。怖がらせてしまう」

足元にじゃれつく二匹をまたぎ、鶴を抱いたまま火のそばへ。

「なんでまた、拾ってきたんです」

薬草を刻む背中が問うてくる。

「毎度のことだ。弱っとるやつは獣であろうと助けてやらねばな。特に鶴には思い入れがある」

そう、鶴を助けるのは二度目だ。