0528この名無しがすごい!
2018/06/02(土) 20:46:01.56ID:pNFBQEGnある寒い冬の日。雪の原に羽ばたく小さな翼を見た。近づいてみると、一羽の鶴が罠に足を捕られてもがいている。
「おお、おお、かわいそうに」
罠を外してやろうと手を伸ばすと、鶴は羽ばたき抗おうとする。けれどすぐに力なく伏せてしまう。
「食うたりはせんから、そんな目をするな、ちび助」
これでは餌も食えなかったろうによく生きていたものだ。いや、きっとこのめぐり合わせも運命なのだろう。この年になってようやく、鶴に恩返しができるとはな。
「帰ったぞ」
「まぁまぁ、今度は何を拾ってきたのですか……」
さすがに鶴を抱えて帰るとは思わなかったのか、ひどく驚いた顔が出迎えてくれた。これはキツネの子を拾ってきたとき以来だな。
「……犬が続いていましたから、よもや三匹目はと予感がありましたが」
「怪我をしとるんだ、手当をしてやりたい。あぁ、三郎と四郎は近づけんでくれよ。怖がらせてしまう」
足元にじゃれつく二匹をまたぎ、鶴を抱いたまま火のそばへ。
「なんでまた、拾ってきたんです」
薬草を刻む背中が問うてくる。
「毎度のことだ。弱っとるやつは獣であろうと助けてやらねばな。特に鶴には思い入れがある」
そう、鶴を助けるのは二度目だ。