>>581 久々に息抜き兼ねて書いた。

使用したお題:『オカルト』『召喚』『チェンジ』

【悪魔の召喚】

「ははっ! この俺がオカルトなんかにまた手を出す羽目になるとはな……」

 恐らくは自業自得という事なのだろう。今までの人生で好き勝手にやり過ぎたという訳だ。だが、こんなとこで死んでたまるか!

「おいこら! 逃げ回ってんじゃねぇぞ、出てきやがれ!」

 ヤクザの男がブチ切れた様子で俺を探し回っている。勝手に組の金を持ち逃げしてそれがバレたら、そりゃそうなるわ。つくづく調子に乗っていた。何をやってもこれまで失敗などした事はなかった。だからこそ調子に乗って金を盗み出したが、結果はこの始末。

「だけど、それでもこれさえあれば……!」

 俺が手に持っているのはなんの因果か幼い頃に、怪しげな婆さんに渡された一つの書物。その本には『悪魔召喚』の術が載っている。かつて虐待を受けていた俺は、それを使い事なきを得た。そこからは順風満帆な人生だったと言えるだろう。
 何をやっても上手く行くのだ。調子に乘るのも当然だろう。今考えるなら真っ当な生き方でも大成したのかもしれない。だが幼い頃の環境が悪かったせいか、そんな道は俺は選ばなかった。

 俺は暴力と金で全てが上手く行く世界しか知らなかった。そしてそれを辞める気は欠片もない。

「さぁ、悪魔よ。再び俺に失敗のない人生を!」

 その呼びかけに答えるかのように、悪魔が召喚されてきた。よし、これで俺の人生は安泰だ!

「……なんだ、折角の召喚かと思ったら既に契約済みじゃねぇか。こりゃあいつの契約者か。おい、契約満了の奴が来てるぞ!」
「……何、どういう事だ?」

「なんだ、もう満了になったのか」
「良いからさっさとチェンジしろ。契約済みの満了者なんか相手にしてられるか!」
「分かったからそう急かすな」

 ……なんだ? どういう事だ? 悪魔が別の悪魔にチェンジした……? この悪魔、どこか見覚えが……?

「思ったよりは早かったが、随分と美味そうな魂へと変わったな。どれだけの悪行を繰り返したのやら」
「……どういう事だ!? お前は……!」
「俺はかつてお前と契約した悪魔だよ。寿命が尽きるまで人生の成功を望んだのは貴様だろう?」

 そうか、見覚えがある筈だ。俺はかつてコイツと契約をして、その代償に……。

「悪行を働かなければ、より良い人生で寿命を全う出来ただろうにな。まぁこちらとしては美味い魂になってくれて有り難いが」
「ま、待ってくれ!」
「悪いが契約は満了した。報酬を回収させてもらおう」

 身体から力が抜けていく。そして得体のしれない何かに食われていく感覚がある。嫌だ、死にたくない! ふざけんな、なんでこんな事に! 
 次第に意識も薄れていき、いつ自分の意識が無くなったのかすら分からなかった。

「真っ当な人生を送れば、まだ50年は先だった筈だがな。淀んだ魂は美味かったぞ、外道」