>>581
使用したお題:『新人賞』『講演』『自己紹介』

【ああ黒歴史よ】(1/2)

 以下は、実話のようで実話ではない、とあるとても悲しい出来事の一片を散々噛み砕いて誇張したものである。
 人の持つ大きな自意識、緊張したときにいらないことを口走ってやっちまった感、そういったものを以下から感じ取ってもらえれば幸いである。



 ……あ、もう喋ってもいいんですか? あ、そうですか。
 あー、マイクこれ大丈夫です? え? いや、大丈夫かって。なんか、音出てます? あ、出てる? 本当に?
 あー、あー。出て無くないですか? あ、出てる? 本当に? あー、あー。あ、出てますね。

 いや、すみません、こんな、ねえ。せっかくの新人賞の講演なのに、ぐだっちゃって。
 あはは、まあ、えー、はい。……なに言うんだったっけ(笑)。あー、すみませんねえ。ちょっと緊張しちゃって。
 こういう、改めた場面での挨拶っていうのをする立場になかったものですから。

 だって、こういうのって、なんか、ためになること言わなくちゃいけないじゃないですか? 人生の糧的なこと?
 校長先生みたいな? いやいや、無理だって、ねえ? 僕なんか若輩者にそんなの、何が言えるかって話じゃないですか?
 いや、まあ、まあ、ね。新人賞取っちゃったからね、しょうがないと言えばしょうがないんですけど、
 あ、取っちゃったって言い方はまずいですね、すみません、すみません。新人賞逃した方本当にすみません。

 こんな僕が新人賞取っちゃってすみません。ね。はー……もう講演時間無くなったんじゃないですか?
 あ、まだある? あ、結構ありますね、あはは。はー、それでは、自己紹介をしましょうか。はい、どうも。どうも。いや、いいですね。
 自己紹介とかやめましょう。まどろっこしいことをやめましょう。どうも、数いる応募者から何かの間違いで新人賞を取ってしまった者です。
 ね。ほんと、何かの間違いかって思いますね。こういったらなんですが、審査員の方は見る目ないんじゃないんですかね? 僕みたいなのを選ぶだなんて?
 僕のほかにたくさんいいのがあったでしょうに。どうして、わざわざ僕の奴に目を留めて、あげくこんな賞与えちゃって。ね。勘違いしちゃいますよー。
 才能あるって勘違いしちゃいますよー。