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使用お題:『オカルト』『チェンジ』『召喚』

【疾風攻機ブロウゲイル】(1/2)


 クラッチを握りシフトを上げる。アクセルを回すと同時に滑らかに加速した。
 夜の高速、疎らな車の間を縫うように風祭 瞬はバイクを走らせる。
 増加する圧力が摂理に逆らったスピードを否定するが、瞬は身を固める様に頭を下げると、さらにアクセルを捻った。
 バイクは良い。自動車にはない、体で風を切り裂く感覚。全てを振り切り、ただ独り先へ進む興奮。

(先へ、もっと、もっとだ!!)

 ピピピー、ピー、ピピピピッ、ピピピー、ピー、ピピピピッ。

「チッ」

 舌打ちを一つ、瞬はレシーバーONにした。

『瞬、仕事だ』
「……はいよ……」

 端的に告げられ、座標がヘルメット内のモニターに表示される。
 瞬は前輪のブレーキをかけると、後輪を滑らせターンした。

 ******

 淡く光る魔方陣の中から怪物としか呼べないモノが這いずり出てくる。
 繁華街で有る筈の町の一角、そこは、不自然に街の明かりが消え、人通りも皆無だった。
 幾つもの乗り捨てられ、主の居なくなった自動車群の、その取り残された自動車一つの中で、女性が腰を抜かして顔を引き攣らせていた。
 どこかの噂では聞いた覚えがある。良く有るオカルト系都市伝説の類いだと思っていたモノ。

 “ラルヴァ”

 悪霊と言う名を付けられたその怪物は、闇夜の中から這い出し人を襲うと言う。現れる時に魔方陣を伴う為、何処かの邪悪な魔導士が召喚しているとか言う噂であるが、その真相を知る者は極少数の者だけだった。

 半透明の蜥蜴の様な形状の、ゲル状の肉体の中に人らしき肉片や骨の浮かぶ、吐き気をもようす様なラルヴァの姿、女性は短い悲鳴を上げ気を失う。

 のっぺりとした、目も鼻も無いラルヴァの貌。だが、生ある者を認識できるのか、取り残された女性に対し、巨体をくねらせると、途中にある無人の自動車を残骸に変えながら、その元までたどり着く。
 と、ラルヴァは、無貌の頭部をバックリと開いた。


 ババッ! ババッ! ババババババッ!!

 ラルヴァの体表が弾け、幾つもの風穴を開ける。
 だがその傷も、ゲル状の体が直に塞ぎ、致命傷とはならなかった。
 だが、ラルヴァの敵意を引くのには成功したらしい。ゲル状の背から幾本もの触手を伸ばすと、攻撃を仕掛けて来た敵に対して鞭の様に伸ばした。

 パスン! パスン!

 銃音が響き、その度に触手が寸断される。


『!! !!!!!! !!! !!!!!!』

 声なき悲鳴が闇夜に響いた。

 パパ―――――――――ヴン!!

 爆音が轟き、昏闇の中から鉄の塊が高速で飛び出す。