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使用お題:『参戦』『その場しのぎ』『夢』『病気』『蕎麦打ち』

【オタクとオレの道中記】(1/3)


「青い空が恋しい……」

 ぐ〜〜〜。

「青井 天たんでござるか? それ、どんな幼女?」

 もっしゃもっしゃもっしゃもっしゃ。

 ふざけた事をぬかす横巨漢に、軽く殺意が沸く。

 のっけから殺伐とした事を言っているのでドン引きされそうだが、先ずはオレの話を聞いて欲しい。

 オレの名前は桔梗屋 巧。そこの横巨漢、細井 颯太によって『ルナティック インサニティ』と言うゲーム世界への転移に巻き込まれた高校生だ。
 元々はオレの幼馴染、桐生 鏡花を巻き込むつもりだったらしいから、有る意味巻き込まれたのがオレだったのは不幸中の幸いだろう。

 こいつ、夢の中で出会ったと言う女神から与えられた超チート能力【神器創造】なんて物を持っていながら、まったく使いこなせていない。
 その場しのぎで余計な物を創りやがる割には、有用な神器を創った試しがないのだ。
 今コイツが食ってる、レーズンブレッド“だけ”を無限に生み出す【無限パン袋】しかり、どれ程破れても股間“だけ”は無事で、何度でも再生する【海賊王の布装備】しかり……

 ぶっちゃけ、このゲームのプレーヤーだったオレが居なかったら、最初に出会ったエネミーで、コイツ確実に死んでただろう。

 さて、『ルナティック インサニティ』と言うゲームなのだが、狂った世界観が売りであり、眼前の風景はと言えば、血の様な赤い空と骨色の大地、そして肉色の植物群と言う精神がどうにか成りそうな色合いなのだ。
 最初のオレの呟きも、もっともだと納得してもらえると思う。
 それに加えて今は腹も減っている為、イライラも最高潮と言った所なのだ。

「意地を張らずに、パンを食べれば良いでござるに」
「うるさいよ! お前と違って、俺は四六時中レーズンブレッド“だけ”じゃ耐えられねーんだよ!!」

 そう、この世界に来て既に3日程経ったのだが、その間食べたのが、神器、【無限パン袋】から出るレーズンブレッドと、同じく神器、【無限ペットボトル】から湧き出るだだ甘のミルクティーだけなのだ。
 三食三食が全てこれなのだから、いくらなんでも飽きるっちゅーの!!
 しかもミルクティーに至っては、コイツと回し飲みと言う……そろそろ拒絶してもバチは当たらないと思う。