0119この名無しがすごい!
2018/04/27(金) 06:50:04.81目的はもちろん自分をおとりにして、連続殺人犯をおびき出すこと。
街の治安隊に話を聞いてみたら、どうやら通り魔的に、女子供に手をかけているということのようだ。
それなら私が最適だ、ということでこうして夜の街を一人で歩いている。
「――っ!」
注意深く歩いていたけど、何気なくすれ違った一人の男が、私の背後に回った途端、首に手を回して、私を暗がりに引きずり込もうとした。
首筋には尖った、冷たい感触を覚える。間違いなく刃物だ。
巻き添えやとばっちりの人を出さないために、私は無抵抗のまま、男に路地裏に引きずり込まれた。
「ふ、ふふ、ふははは」
男が立ち止まって、笑いだした。
ちらっと肩越しにみた、手配書の人相書きと同じ顔だ。
「ねえ、どうしてこんなことをするの?」
「肉だ……肉だ、肉だ肉だ肉だ肉肉肉――」
男は血走った目で、ナイフを更に私の首に押し当てた。
話が通じそうにない。
ならば、彼のためにできる事は一つ。
「肉肉にく――え?」
男は目を剥いて、愕然とした。
私はするり、と首に回されてている腕から抜け出し、数歩の距離を取って、男に向き直った。
男は信じられないって顔で自分が持っていた刃物を凝視する。
柄だけになったしまった刃物、刃の部分はほとんどバターのように溶かされて、地面にどろりとおちていた。
「もう、ここまでの方がいい。これ以上だと人間に戻るまでの回数が増えてしまう、、、、、、、、、」
「――うおおおおお!!」
男はわずかに残った刃の部分を振りかぶって、私に斬りかかってきた。
手を無造作に振り払う。
赤色の魔力球――直前に作り出して、男の凶器を溶かした魔力球が、私の手の振りと軌道で飛んでいく。
途中で爆発的に大きくなって、男の全身を呑み込んで、一瞬で溶かしてしまった。
跡形もなくとかされた男、骨の一本も残ってない。
多分自分が何をされたのか、痛みも感じる暇もなく絶命したはずだ。
私は、地面に残された、男の刃物だった金属の塊をみて。
生まれ変わる前に並んでいた時にみた、悪人達の悪行と生まれ変わりの事を思い出して。
「十人殺しなら、動物に一回ですむはずだから」
男が、次の次はちゃんとした人間に生まれてくることを祈った。
やさしい