「そう、面倒な事をするのね。あんなの、牢屋にぶち込めばいいのに」
「それはあまりよくないんだ」
「なんでよ」
「死後の審判の事を知ってる?」
「もちろん。死んだ後、人生の善行と悪行を統計して、それで生まれ変わりのランクを決める説の事よね」

 説、じゃないんだよな。
 私は実際にそれを経験した、ちょっとした手違いで記憶を消去しないままアレクサンダー・カーライルとして生まれ変わったから、それが「説」とかじゃなくて、実際にある事だと知っている。

「犯罪を犯した人間を牢屋に閉じ込めるのは簡単だけど、それじゃ彼らが善行を積んで、最後の審判で帳尻があう機会を奪うのと同じことだから」
「だから野に放って、改心させるって事」
「うん、そのためのあの魔法。あれは悪い事をしたら反応してとめる魔法だから。どうしても悪い事を続けたら、最悪手首がちぎれる様になってる」
「でもそんなの関係なく、悪い事しかしない人間もいるじゃない? 手首がちぎれようがなんだろうが」
「そういう人は……残念だけど殺してあげるのがベストなんだ」
「殺してあげる?」
「悪行をかさねすぎる前に」

 461人を殺して、ミジンコに生まれ変わった山賊の事を思い出した。
 その人がもし、一人目を殺した時点で逆に殺されていたら、次の人生は貧民だけど、人間のままだと思う。
 早めに生まれ変わったら、記憶とか人格をリセットやりなおせるはずなんだ。

 だから、どうしようもない悪人は早めに殺して止めてあげるのがいいんだと思う。
 裁くんじゃない、助けるって感覚が強い。