0911この名無しがすごい!
2018/04/27(金) 15:27:35.53「ど、奴隷は人じゃないって、みんな言ってるよ……」
「では奴隷であることの条件とは?」
男の言葉に、少女は一瞬驚く。泣き声が止んだ。
「え、だってうちはずっとずっと奴隷の家系で……」
「奴隷ではなかった先祖だっているでしょう。戦争などで奴隷の身分になったのなら、それ以前は違うことになる」
「だって、奴隷は人間じゃないんだよ……」
「僕には、君が人間にしか見えません。君が奴隷だというのは世界のどの人間なのですか?
どの人間が否定すれば、君は人間で、どの人間が肯定すれば、君は奴隷なのですか?」
「に、人間、あたしが? え、え、」
初めて、他人から人間だと認められた。家具として、所有物として扱われ続け、家族以外の人間から、初めて人だと言われた。
それは、少女の中で最大の驚きだった。
「だって、あたし奴隷だから、人じゃないから……」
「自分が『誰』かを決めるのは、他人ではなく自分自信なんですよ。例え世界中に否定されても、君は君のなりたい物にならなくてはいけません」
「だって! それでも、あたしは奴隷なんだ、この焼き印を入れられた日から、あたしは……」
不意に男が片膝をついた。しゃがむ勇者の左手が、少女の右手首を掴む。右手は顔の打撲痕へ。
「な、なに?」
「動かないで」
柔らかな青い燐光、ジワリと手の当たる所に優しげな熱。治療魔術だ。
「……治ってる」
男が手を離すと、右手のアザがきれいに消えていた。おそらくは顔のそれも消えているだろう。
そして、右手が首筋、焼き印に当てられる。再び燐光が灯った。
「……この傷が君を奴隷にしているなら、無くせばいい。それでもなお、奴隷でいたいなら、好きにすればいいでしょう。
でもほんの少しでも『奴隷でいたくない』と思うなら」
手が離れる。少女には、見なくても傷が消えていることがわかった。
「君は自分の意志で『人』でいるべきなんです」
「……あ、ああ、あ、」
こんな優しい主人公もいるってのになずなのサイコパスときたら