美世が席についてビールを回すと二つに重ねた小鉢を雛子に差し出した。
「トモ兄のは姉さんよそったげてな」
 美世は一つの小鉢を手に取るとあれこれと具材を選びながら綺麗によそった。
「はい涼介、いっぱい食べてな」
 不安そうな表情をしていた山田だったが一口食べると表情が変わった。
「美味しいっす!」
「そやろ、なんせスーパードクターが捌いたスッポンやからな」
「やだ美世ちゃん持ち上げすぎ、でも構造は把握したから次からは3分で解体できるよ」
「ほなまた定期的にやらななぁ」
 美世が山田の肩をポンと叩いた。
「はい、期待してます雛子さん」
「任しといて、これで豪腕にさらに磨きがかかるね、でも涼介くんて球のスピードどれぐらあるの? 素人目に見ても速いってのはわかるんだけど」
「前に計った時は最速155kmでした」
「ん〜聞いてはみたものの、それってどれぐらいなのか」
「まあ高校レベルなら最速の自信がありますx
「姉さん見たかこの自信、オットコマエやろ?」
「うん、なかなか聞けない台詞だね、今期は優勝するんだって?」
「はい、もちろんです」
「へぇーへぇー、じゃあ来年あたりはスカウトされちゃうかも、今のうちにサインもらっとこうかな」
 美世がギラリと険しい顔になって手を広げ、山田の前に立ちふさがるように寄り添った。
「姉さん、涼介のサインは有料やで、マネージャーのウチ通してもらわんと」
「え?そうなの?」
 山田はまさかという顔で美世を見た。
「涼介はなあ、来たる日にそなえてプロ並のサインを考えてあるんや
うちはもうもろた」
「み、美世さんそれ絶対秘密だって」
「ぷ」
 雛子が少し吹いた後、真っ赤になって俯いた山田を見た二人が大笑いした。