>>202
>話の流れとしては悪くない! 君が苦手とする濡れ場シーンに期待が持てる!

その無茶振り受けた!
エロくない俺が稚拙な知識をフル稼働
じゃい!勝負だワイの股間!

 二人が買い物を済ませてエスカレーターで下っていると、ゲームコーナーがあり、手前に大型のゲーム機が並んでいる。その左端にストラックアウトがあった。9枚の的にボールを当てて成績を競う例のアレだ。美世と山田はそれに目線をやると顔を見合わせてニヤリとした。

 バシーンという破裂音が鳴り響くゲームコーナー。周りでゲームに興じる人々が手を止め、口を空けて見ている。
「ちょいちょい、あんまり本気になったメゲるんちゃうか」
「ははは、セーブしてるんですけどね、ピッチャーに的とボールを与えるなんてハムスターに滑車を与えるようなもんですよ」
「しかし針の穴を通す正確さやな、1から9まで順番に9球で仕留めてフレームに一度も触れてへんて、ゲームにならへんやないか」
「美世さんもやってみます?」
「ウチはあかんわ、球速は女にしてはある方やけどコントロールはさっぱりや」
「ちょっと直せばこの程度は簡単ですよ」
 山田がコインを投入して美世の背中を押した。
「どうやるんや」
「いいですか?」
 山田が美世の後ろから手を取った。
「距離が近いんでもう左足は最初から踏み出しときましょうか、そんでもってこう」
 山田は美世の手を操りながら肩をつかんで美世の体を捻る。腰にてを当ててフォームを矯正しながら優しく教えた。普段は体に距離がある山田だが、野球の事になるとやたら近い。
「ここで少し胸を開きます、目線は外さないでください、ん? 思ったより肩が柔らかいですね」
 そう言いながら腕を戻す。
 背中を押し出しながら腕を弓のように引き絞る。何かの関節技をかけたような状態だ。
「胸は痛いですか?」
「うん、ちょっとひきつってる」
「ここまで絞ったら力まないで的だけ見て指先に集中してください、そして腕は耳をかするように、腕の気配を耳で感じてください、そしてリリース」
「ふむ」
「やってみてください、あまり力まないで、的に集中してムチのようにです」
 山田が離れて美世が振りかぶろうとすると山田が言った。
「狙いは?」
 美世がギラリと眼光を強める。
「ど真ん中5番や」
 そう言いながら投げられたボールは2356の中心のフレームに直撃してガチャーんと激しい音を立てた。しかし、パネルの上側から抜ける構造になっていたため5、6が即座に吹っ飛んだ。そして3が半分倒れて耐えていたが、パタリと倒れた。
「3枚抜き! 凄いっす美世さん! 90キロはあったかも!」
 そう囃し立てる山田に振り替えった美世は苦笑いした。
「なるほど、亮介の言う通りや、びっくりするほど速かったし自分で制球してる感じがした、でも三枚抜きの結果は偶然や、二度とはできんなぁ、でも亮介は違う、5ぉ言うたら5ぉやねんな、その自信、あんねやろ?」
 山田は美世の不動の信頼を感じて眼光を強めた。
「もちろんっす」

 ガラス越しに真剣な表情の二人の顔が並ぶ。ゆっくりと空中に浮上したぬいぐるみを見つめながら二人はゴクリと唾を呑んだ。流れでゲームコーナー内を回っていた二人だが
 美世がUFOキャッチャーの中に、リアルさが多少キモ可愛いトラのぬいぐるみを見つけて食いついたのだ。あり得ないと思いながら気軽にコインを投入した山田だったが巨大なぬいぐるみを巨大なアームで吊り上げるこのゲームで奇跡的にぬいぐるみが宙に浮いた。
 アームがターンする場所で少しブラブラとぬいぐるみが揺れた。
「ああ」
 口を大きく開けて声を漏らす二人だったがしかしぬいぐるみは無事に排出口まで到達し、どさりとおちて取り出し口の蓋を揺らした。
「やったぁー!」
 さっそく取り出し口からぬいぐるみを取り出した美世が大喜びで言う。「めっちゃかわいいやん、フカフカやん? 奇跡やな!」
「ぼ……ぼ、僕に奇跡はありません全てけ、け計算通りです5番と言えば5番です」
「めっちゃ動揺してるやん、でもこれって」
「もちろんプレゼントしますよ」
「おおきにー!」
 そういってぬいぐるみごと抱きついてきた美世に山田は真っ赤になって両手を泳がせた。そしてゆっくりと、美世の背中を包み込んだ。