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ワイが文章をちょっと詳しく評価する【91】
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0001ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2018/05/31(木) 10:51:37.67ID:e9HLf/lY
オリジナルの文章を随時募集中!

点数の意味
10点〜39点 日本語に難がある!
40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
満点は創作者が思い描く美しい夢!

評価依頼の文章はスレッドに直接、書き込んでもよい!
抜粋の文章は単体で意味のわかるものが望ましい!
長い文章の場合は読み易さの観点から三レスを上限とする!
それ以上の長文は別サイトのURLで受け付けている!

ここまでの最高得点76点!(`・ω・´)

前スレ
ワイが文章をちょっと詳しく評価する【90】
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1526900952/
0392この名無しがすごい!
垢版 |
2018/06/05(火) 17:07:07.41ID:zg9GrYl6
お願いします
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 男は絶望していた。
弁護士を目指してひたすら司法試験にかけてきた歳月が、まるで、ぼっちだった中学の夏休みのように、何の思い出も残さず消えていった。
これで最後にしようと、三十代最後の年に背水の陣で臨んだ試験の結果は、やはり不合格。
社会の役に立ちたいと選んだ法曹の道だったが、手ひどい裏切りにあったようで、怒りしかわいてこなかった。
バイト暮らしが染みついた実務経験のない独身の中年男に、まともな就職など望むべくもない。
田舎に帰ろう。そこで首でも吊ろう。男はなけなしの金で故郷への切符を買った。

 限界集落のはずれ、二束三文の土地に建つ古い田舎家は荒れ放題。
両親はすでに他界しており、家を手入れする兄弟親戚もない。
錆びついた鍵を開けて玄関を入った途端、淀んだ空気に肺がむせ返る。
埃の積もった床に靴を脱ぐ気になれず、そのまま上がると磨り減った踵のいびつな靴跡が畳に残った。
懐かしさより、荒んだ生家に孤独感ばかりが募る。
台所のテーブルに置かれたまま埃を被った湯のみが、父親の寂しい葬式を思い出させた。

 ひと通り家の中をまわって比較的綺麗だった客間に落ち着くと、幾重にも蜘蛛の巣が張った床の間に置かれた古い壺が目に入った。
見慣れた、子供の頃は絶対触らせてもらえなかった壺である。
値打ちはないが価値はあるというのが、父親の口癖だった。
そういえば祖父も同じようなことを口にしていた気がする。
確かに壺はみすぼらしく、到底、金になるようには見えない。
それでも代々この家に伝わる品として、いつも客間の床の間に飾られていた。
どうせこの家も俺で最後だ。
そう思うと、今の自分の境遇がこんな片田舎にしがみついていた父や祖父のせいに思えて、どうにもやり切れない。
男は壺を掴むと、その想いをぶつけるように床柱に思い切り叩きつけた。
ツボは粉々に砕けた。
すると、いつの間に現れたのか、壺があった辺りに小僧がひとり、片膝を立てて座っていた。
「私は災厄だ。封印を解いてくれた礼に褒美をやろう」
男は驚いた。しかし男の家が代々守って来たものは、壺ではなく、壺以外の全てであることには思い至らなかった。
「褒美というなら金をくれ。二億もあればいいだろう」
「私は災厄だ。金が欲しいなら福の神にでも頼めばよかろう」
「では、お前はなにができるのだ」
「私は災厄だ」
「そうか、それなら俺はここで首を括るつもりだから、俺にくれる代わりにこの国に災厄を降らせてやれ」
「そうしよう。これはおまけだ」
小僧がそう言うが早いか、男はその場に崩れ落ちて死んだ。
小僧が塵に紛れて姿を消すと、たちまち家が燃え上がった。
村の消防が駆けつけて鎮火した後から、男の焼死体と、床下から直径二メートル程の穴が見つかった。
0393この名無しがすごい!
垢版 |
2018/06/05(火) 17:07:50.53ID:zg9GrYl6
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 火事からひと月ほど経ったある日、穴に柵をする相談がまとまる前に事故が起きた。
火事場見物に来ていた子供たちのひとりが穴に落ちたのだ。
ただちに地元の消防隊が呼ばれ救助活動が始められたが、穴の底にたどり着くことができず、事態は深刻になった。
レスキュー隊による捜索も失敗すると、ついには自衛隊が出動して捜索が行われたが、やはりなんの成果もあげられなかった。
問題は穴に底がないということだった。
 行方不明ということでこの事故が忘れ去られようとしていた頃、学際的な研究チームが結成され、穴について徹底的な調査が行われた。
どうやら深さ一万二千メートルのロシアのコラ半島超深度掘削坑よりも深いのではないかという噂が囁かれ始めた。
しかし、いったいこれほどの穴がいつ、どうのようにして出来上がったのか、誰も想像できず仮説すら立てられなかった。
とはいえ、それが目の前にあることを考えると、成立過程を考えるより、その利用法に目を向けるべきだという議論が交わされるようになった。
穴が核廃棄物の処理に利用できるのではないかという目論見からだった。
 やがて穴を中心に放射性廃棄物の処理施設が建設された。
処理施設といっても、実のところ日本中から運ばれてきた放射性物質をただ穴に放り込むだけである。
施設の運営は軌道に乗り、やがて世界中から核のゴミが集められてきた。
いくら放り込んでも穴はいっこうに埋まらず、いつまでたっても底が見えることはなかった。
限界集落だった村は、その地方の中心的な町となり、人が増え道路が整備され、やがて市へと昇格した。

 ある日、穴を覆った建屋の屋根で、ドスンという大きな音がした。
職員が屋根に登ってみると、どこから来たのか、ひとりの子どもが屋根を突き破って死んでいた。
職員は驚いて空を見上げたが、よく晴れた空には雲ひとつなかった。
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