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ワイが文章をちょっと詳しく評価する【91】
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0001ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2018/05/31(木) 10:51:37.67ID:e9HLf/lY
オリジナルの文章を随時募集中!

点数の意味
10点〜39点 日本語に難がある!
40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
満点は創作者が思い描く美しい夢!

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抜粋の文章は単体で意味のわかるものが望ましい!
長い文章の場合は読み易さの観点から三レスを上限とする!
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前スレ
ワイが文章をちょっと詳しく評価する【90】
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1526900952/
0429この名無しがすごい!
垢版 |
2018/06/06(水) 00:06:41.93ID:UH9/icQU
「いい気なもんですね」
 突然聞こえた声に美世は振り向いた。見覚えのある女子学生が立っている。敵意むき出しの声と顔に美世は怪訝な顔をして言った。
「は?」
「どうやったらイケシャーシャーと山田君にあんな事ができるんですか?」
 美世は先程の山田とのやりとりを見られていた事を理解したが女の言う意味がわからずに言った。いb
「何の話やねん、つかアンタ誰や」
「野球部のマネージャーの三沢です」
 美世は思い出した、いつもベンチで幽霊のように突っ立っていたが、この前はすぐ近くから自分を見上げていたあの子だ。
「言いたい事があったらゆうたらええんちゃうか」
 美世は顔を伏せ気味に三沢を睨んだ。子供相手にどうのこうのするつもりはないが、面倒な小動物を追い払う気持ちで少し怒気を放つ。自分でもムキになりすぎだと思ったが、その原因はじきに露見した。三沢なる女は声を震わせたながらも引き下がらない。
「図々しいですね、山田君をあんな目に合わせといて」
「だから何の話や」
「山田君から聞かなかったんですか? 1周間の自宅謹慎にされてたの」
「なんやて?風邪ちゃうんか」
「のん気でいいですね、それも大人の余裕ってやつですか?」
「どういう事や、教えてくれ」
 美世は車に向いていた体を三沢の方に向けた。
「山田君、度々アナタの事で同級生とモメたりしてるんですよ」
 三沢は美世の爪先から頭のてっぺんまで舐めるように見た。常識ってわかります? アナタのような年上の女性がそんな派手な格好で
派手な車で山田君につきまとって、妙な噂が立たないほうがおかしいんじゃありませんか? 頭悪いんじゃないかな」
 震えていた声に張りが出て来て三沢は勢いに乗っているようだった。逆に美世は鷹山の指摘を思い出して動揺した。
「知ってますか?あなた有名人なんですよ、この学校で知らない人は居ませんよ、そりゃそうですよね、わかりませんか? 山田君タダでさえ有名なのに、そこにアナタみたいな人が周りをうろついてたんじゃね
山田君、アナタのせいで深夜のバイトがバレて1度、アナタとの交友関係で一度、アナタを巡って同級生とモメた事で3度、合計で5回生徒指導室に呼ばれてるんですよ?」
 美世は絶句した。やっぱりかと納得できる山田の災難と、生きる世界の格差にいまさら愕然とした。
この子は山田と同じ世界の住人でしかも山田の事が好きなのだ。総考えると自分は完全なストレンジャーだった。言葉が見つからずに黙っていると三沢が畳み掛ける。
「この前呼ばれた時には、先生を投げ飛ばしたんですよ?一体何があったんでしょうね、さしずめ、あなたの悪口でも言われて激昂したって所じゃないかしら、なんせ見た目が見た目だし」
 美世は完全に言葉を失った。
「あの大人しくて虫も殺せない山田君がなんでだろ、誰かの影響じゃないのかな、強盗を殴って入院させるような女とか」
 ひたすら呆然とする美世を見て勢いづいた三沢が言った。
 「高校球児が暴力を振るう事でどうなるかわかりますよね? ヘタすれば甲子園の出場権を失うんですよ? 今回は学校内の出来事なので先生もやむなく
教育委員会への提訴は控えて非公式の謹慎処分で済みましたが、もう一度こんな事があればタダじゃ済まないのってわかりますよね?」
 ワナワナと震える美世に三沢が近寄って顔を寄せてきた。
「もう山田君に近づかないでください」
トーンは変わらないが顔を寄せて来た事でボリュームが上がった三沢の声が美世の中に響く。
 三沢は俯く美世に絡めた視線を引きちぎるようにそっぽを向くとスタスタと歩いて去っていった。三沢の言葉は魔術のように美世の心を支配していった。

 美世は呆然としながら走る車の中で考えていた。
(失敗した、やっぱり考え甘かったんかな、やっぱり間違うてた、姉さんの嘘つき、いや姉さんのせいやないウチがアホやっただけや姉さんはウチの事思ってくれただけや

(――そもそもなんでこんな事になったんやろ、好きになんかなるはずなかったのに、涼介はもうすぐ甲子園で優勝して、ほんでその勢いでプロになる、間違いない、ドラフト指名された時にウチみたいなもんがおったらマスコミが大喜びや
なんで気づかんかったんや、アホやろ、山田選手の女はこれやって強盗シバくビデオ流されるに違いない、送検はされんかったけどやり過ぎで傷害容疑の調書も取られた、もう遅いかもしれん、結構あちこちで露出してしもたし、噂にもなってる
いや、大丈夫や、ウチはタダの友達や、二人だけの時にちょっと悪乗りしてキスしたりピーしただけや、これ以上変な場面を見られんかったらなんとか言い逃れできる、じゃあどうすんのや。
0430この名無しがすごい!
垢版 |
2018/06/06(水) 00:28:43.70ID:UH9/icQU
 美世は自分の気持ちを強烈に認識した。
「あかん、失いたあない、不相応なもんに手ぇ出したらあかんて気ぃつけてたはずやのに」

 美世は気がつくと海辺にいた。
「あれ?なんでウチこんなとこにおんねん、どこやここ、車は?」周りをぐるりと見回すと遠くに前輪を階段に落とした車が不自然に傾いて止まっていて、その下にヒールがある。美世はしゃがみこんだ。
「知床やない事は確かやなぁ、海の色がちゃうもん」美世は下を向いて砂を掴みサラサラと落とした。「ウチ、今日何しようとおもてたんやったっけ」美世が顔を上げて水平線を見ると見覚えのある島が見える。
「あ、思い出した、ここ石割やん、トモ兄の事務所に行こうとしてたんや、トモ兄と一緒に膳でホッケ食べようとおもたんや」
 美世は車に戻るとガタンと荒々しく車を上げて石割駅を目指した。石割駅前の通りを数十メートル進んで車を停車させてビルを見上げた。
鷹山が10年前に事務所を構えていたビルは閑散としていて人の気配がない
埃まみれの階段を登ってドアノブを回
ガタンと音がしただけで鍵は固く閉じられていた。「おかしいな、トモ兄どこ行ったんやろ」美世はポロポロと涙を流した。「ウチ、また一人になってまうんかなぁ」美世はまた空白を漂流した。

 レストランオーナーでサーファーの茜の顔が見える。タカ? 今日は来ていないよ、と言っている。

 張がふざけた中国人の格好で立っている。ユンシャン? 知らないアルよ。

 膳の女将はまだ普段着だ。鷹さん? 知らないねぇ。

「美咲ちゃんどこ行ったんや、ひょっとしたら美咲ちゃん所におるかもしれん、シンガポールやったっけ、トモ兄どこいったんや、緊急事態やで、いつもみたいに颯爽と登場する所やで」

「美世さんだっけ?今日は迎えに来てないの?」「ん、ああ、ちょっと遅いな」
「遅いってもう一時間ぐらい待たされてるんじゃないの?」
 練習が終わっていつもの場所で美世を待っている山田に自転車を押しながら歩いてきた三沢が話しかけてきた。
「何か用?」「別に、ねぇ、山田君はあの人と付き合ってんの?」
「付き合ってねーよ、あの人は俺の左腕が気に入ってるだけだ」
「でも山田君は好きなんだ」「お前には関係無いだろ」
「ふーん、でもなー、あんな年上の人が普通高校生とか相手にはしないよねー、あんがい面白がってんじゃないのかな」「お前もう帰れよ、真っ暗だぞ、危ないだろ」
「じゃ途中まで一緒に自転車で帰ろうよ、そうすれば一石二鳥でしょ?「できるわけねーだろ」
「連絡つかないんでしょ?きっともう来ないよ」「そんなわけねー」
「今までこんな事あった?始めてじゃない?」
 にこにことしながらしたり顔で話す三沢に山田は何か違和感を感じた。
「そういえばお前なんでこんな時間まで残ってんの?」「私心配で、あの人に山田君が騙されてると思ったら……」
「お前何言ってんだ」「山田君黙ってたんだ、あの人が原因で謹慎食らってた事」
「別にあの人は関係ねー……」
 否定しようと言葉を発した山田だったがおかしな事に気がついて言葉を止めた。
「お前美世さんと話したのか!」
「うん、今朝偶然ね、でもそんな事知らないって言ってたよ、逆に凄い顔して睨んで来たな」
「お前何してくれたんだよ!」
 山田は三沢を避けて走りだそうとしたが三沢が山田のカバンの肩紐を掴んで引きずられ気味によろけた。咄嗟に止まった山田に三沢が言う。
「あの人、山田君で遊んでるんだよ?」
「3秒以内に離せ、じゃねーと怪我するぞ」
「山田君は絶対に私を怪我させたりなんかしない」
「離せよ」
「やだ、絶対に離さない」
 真剣な目で山田をみつめる三沢に山田は説得を諦めた。
「欲しけりゃくれてやる」
 山田はカバンを捨てると走りだした
街灯の向こうの闇に消える山田を三沢は呆然と見つめていた。

 美世が瞼を開くと白い天井が見えた。
いつの間にか鷹山のマンションで寝ていたようだ。電気が煌々とついていたが外は暗い。
美世は部屋を出て廊下の電気をつけると鷹山の部屋のドアを開けた。鷹山の部屋に漏れでた廊下の光がベッドで眠る鷹山の姿を映しだした。
「よかったぁ、こんなとこにおったんか」
 美世は鷹山の横に歩いていき膝を突くと手を布団の中に入れて鷹山の手を握った。
 トモ兄なんかほんまはおらんくて、頭の弱い子が生み出した幻のヒーローなんかとおもた」
 鷹山の姿を見た美世の世界は徐々に色を取り戻した。
0431この名無しがすごい!
垢版 |
2018/06/06(水) 00:41:25.47ID:UH9/icQU
「ああ、そやった、うち亮介と別れなあかんのやった……ぷっ、そもそも付き合うてもないのにどうやって別れんのやろ」
 再び涙が溢れて来る。
「どうっちゅう事ない、ウチ別に好きちゃうし」
 美世は部屋に戻ってバッグから携帯を取り出した。携帯には山田からの着信履歴がいくつかと、連絡がつかない美世へのメッセージが溜まっていた。美世は山田からの連絡をくれというメールに返信を押すと
思いつくままに悪辣で無礼な言葉をつづった。黙々と文字を打ち込みながら美世は溜まった涙をポロポロと落とした。
「ある日人魚姫は海で遭難した王子様を助けましたっと」
 美世は一通り打った文章をもう一度読み返した。
「我ながら悪い女やな〜、一体何様やねん、これはシャランキューでもよー歌にせんで」

 美世は自分が書いたメッセージを眺めながら手と顎をわなわなと震わせた。
「こんなもんウチが涼介送りつけるんかいな……」

  最悪や

 美世は床にぺたんと座った状態で苦しそうに目を瞑って天井を仰いだ。ブラブラと体を揺らし、頭がカクカクと追従している。
「あそこで助けんかったらよかったな
無視して通り過ぎたらよかったな、情は人の為ならずていうけどええ事なんかいっこもないやん、なんでこんな辛いんやろ
もっかい愛子さんに会いたかったな、でもどうせウチなんか薄汚れてるし、嫌われたらええねん、ウチこんなん得意やねん」
 ブツブツと独り言を言いながら美世は電話を持った手を震わせて、最後まで送信をためらった。
「人間の王子様に恋をした人魚姫は哀れ、海のあぶくと消えまし…………
た……」
 親指が電話の上に落ちるとピッと送信の音が鳴った。
「バイバイ涼介」
 美世は泣き崩れた。ベッドの上でのたうちまわりながら枕に顔を埋めて声が漏れないように美世は泣いた。
「ウチ求められて嬉しかった、真っ直ぐに愛されて嬉しかった、ただそれだけやねん、なんでこんな事になってもたん!」
 真夜中の鷹山家に深い深い慟哭が染み込んでいった。

 この事件後、夏の高校野球は本番に突入した。春の大会で有名になった事で他校のマークが厳しい中、予選をサクサクと勝ち進む稲村実業を鷹山は見守った。
 朝寝坊するようになった美世の事を鷹山は好都合に思っていた。ロック外の中央玄関まで新聞を取りに行くのは美世の仕事だったのだが
今は鷹山が玄関まで取りに行き適当に読みたい記事を流し読むと捨てるというスタイルになった。
 スポーツ欄には小さいながらも破竹の進撃が止まらない稲村実業の山田選手が度々登場していた。
 鷹山は山田の事が気になってしょうがなかった。仕事の合間合間に高校野球の記事を漁り、山田の試合がある日にはワンセグの電波を探してうろうろとした。テレビに映る山田は雰囲気が一変していた。
 鷹山には同じ人物には見えなかった。なんと表現したらいいのだろう、いわば鬼の形相だ。鷹山も若い頃には修羅場物件を抱えると、顔つきが変わると言われた。幼い美世が[トモ兄ちゃんの鬼が起きとる]と言って泣かれた事もあるが
こういうことだろうかと思った。元々速い球速がさらに速くなり160km越えを期待させるほどのストレートが打線を沈黙させる。
 危険球まがいのボールが正確に鼻先や脇の下をかすめる投球は、批判の対象にもなったがデッドボールは一度も無し。さらには春の大会や練習試合で一度も披露していない2種類のスライダーを所々で出してくる
 隠していたようだ。あまり正確ではないようだが采配は美世の言う所の変態キャッチャー稲葉だ。必要な場所で必要なだけチョコチョコと出して来る。バントを多用してくる高校もいたが選択肢のないバント作戦は無力だった。
 戦略的な交代以外はほぼ山田が先発完投している。基本的に投球数が少ないのだ。奇跡的なめぐり合わせとなった宿敵東条を準々決勝で破った稲村実業はついに決勝まで来ていた。ノーヒットノーラン2回という記録的な勢いで上り詰めてきた山田を
紙面は大きく取り上げるようになった。某ネタ専門スポーツ誌が宇宙人説を語るまでに山田の名前は有名になった。

鷹山は今日の甲子園決勝戦を見るために近所のファミレスに行こうとしたが、台所の美世が呼び止めた。
「なぁトモ兄」
「ん?」
「山田君は勝ち残ってるやろか」
 鷹山は口から心臓が飛び出した。やっぱりというか気にならないわけがない。しかし必至で遠ざけて忘れようとしていたに違いない。しかもこっそりと鷹山が高校野球をチェックしていた事を知っているようだ。鷹山は迷った。正解はどれだ。
 しかしこの状況で口に出した嘘は美世には通用しない。鷹山は結局考える事をやめて静かに言った。
「今日決勝だよ」
「そうなんや」
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