>>49
 雑音が耳に入る。
 気取られないように顔を僅かに動かす。
 視界の隅にお調子者を捉え、左腰に差していた刀の鯉口を切った。
 振り向き様に抜刀。ごとりと鈍い音がした。地面に転がる顔を見やる。
「惚けたか」
 一言で切り捨てた。
 立ち去る間際、懐に手を入れる。取り出した和紙に刀身を挟み、血糊を拭った。
 その場で和紙を中空に放つ。散華の白い花に彼岸花の朱が混じる。
 祈るような思いを目に宿し、深い闇へと歩み出す。